アイデンティティ認識型プロキシ:安全なリモートアクセスを実現する仕組み
セキュリティを高めたい
「アイデンティティ認識型プロキシ」って何か、具体的にイメージがわかないので教えてください。
情報セキュリティ専門家
例えば、会社のネットワークにある資料に、家のパソコンからアクセスしたいとします。その時に、直接アクセスするのではなく、「アイデンティティ認識型プロキシ」というものが間に入って、誰がアクセスしようとしているのかを確認する役割を果たします。
セキュリティを高めたい
会社の資料を見るために、間に誰かが入って確認してくれるんですね。でも、なぜそんなことをする必要があるのですか?
情報セキュリティ専門家
それは、情報漏えいを防ぐためです。アクセスしてくるのが本当に会社の職員なのか、会社から許可されたパソコンなのかを確認することで、セキュリティを高めているのです。
アイデンティティ認識型プロキシとは。
「情報セキュリティの分野で使われる『アイデンティティ認識型プロキシ』について説明します。これは、利用者とアプリケーションの間に仲介役として置かれ、通信を中継する仕組みです。利用者がアプリケーションを使おうとする度に、認証システムと連携して許可を改めて確認するため、『アイデンティティ認識型』と呼ばれます。もし不正アクセスが疑われる場合は、接続を遮断したり、複数の方法で本人確認を求めたりします。これにより、本当に許可された利用者であり、安全な機器からアクセスされているかを確認しています。
さらに、会社のネットワーク内に『コネクター』という特別なサーバーを置くことで、会社内にあるアプリケーションでもインターネット経由で利用できるようになります。通信はアイデンティティ認識型プロキシによって暗号化されるため、インターネットを経由しても安全にアプリケーションを利用できます。
最近は、場所を選ばずに働くスタイルが普及し、会社の外から社内のシステムやアプリケーションにアクセスする機会が増えています。このため、アイデンティティ認識型プロキシは、安全なリモートアクセスを実現する方法として注目されています。
従来のIDとパスワードだけの認証や、SSL-VPNを使った社内システムへのアクセスと比べて、アイデンティティ認識型プロキシは、利用者と機器の認証・許可を厳密に行います。これにより、より安全に社内のアプリケーションやデータにアクセスできます。
アイデンティティ認識型プロキシは、リモートアクセス環境においてVPNを補完したり、置き換えたりするだけでなく、『ゼロトラストモデル』という新しいセキュリティ対策においても重要な役割を担っており、普及が進んでいます。」
アイデンティティ認識型プロキシとは
– アイデンティティ認識型プロキシとはインターネットの利用が当たり前となった現代において、企業内ネットワークや重要な情報資産を外部の脅威から守ることは非常に重要です。そのための対策の一つとして、従来からプロキシサーバーと呼ばれる、ユーザーとアプリケーションの間に立って通信を仲介する仕組みが利用されてきました。しかし、従来のプロキシサーバーは、ユーザーの認証を一度行えばその後は自由にアクセスを許可してしまうケースがあり、セキュリティ上の課題を抱えていました。そこで登場したのが、「アイデンティティ認識型プロキシ(IAP)」です。IAPは、従来のプロキシサーバーのようにユーザーとアプリケーションの間で通信を仲介しますが、ユーザーの認証と認可を都度行う点が大きく異なります。つまり、IAPはユーザーがアプリケーションやデータにアクセスする度に、そのユーザーが本当にアクセスを許可されているのか、アクセス元の端末やネットワーク環境に問題はないかなどを逐一確認します。具体的には、ユーザーがアプリケーションにアクセスしようとすると、IAPはまず認証基盤に接続し、ユーザーの認証情報(IDやパスワードなど)が正しいかどうかを検証します。認証が成功すると、次にアクセス権限の確認が行われます。この際、事前に設定されたポリシーに基づいて、ユーザーがアクセスしようとしている情報へのアクセス権限を持っているかどうかを厳密にチェックします。もし、アクセス権限がない場合や、アクセス元の端末がセキュリティ要件を満たしていないなどの問題があれば、IAPは接続を遮断し、不正なアクセスを未然に防ぎます。このように、IAPは従来のプロキシサーバーと比較して、より厳格なアクセス制御を実現することで、企業内ネットワークや情報資産を保護します。近年、企業活動におけるクラウドサービスの利用拡大やテレワークの普及が進み、セキュリティ対策の重要性がますます高まっています。IAPは、こうした変化に対応できる強力なセキュリティ対策として、今後ますます注目を集めることが予想されます。
項目 | 内容 |
---|---|
従来のプロキシサーバー | ユーザーとアプリケーション間に介在し通信を仲介。一度認証すれば、その後は自由にアクセスを許可するためセキュリティ上の課題あり。 |
アイデンティティ認識型プロキシ(IAP) | ユーザーとアプリケーション間に介在し通信を仲介。ユーザーの認証と認可を都度行う。アクセス毎にユーザーのアクセス権限、端末やネットワーク環境を確認し、問題があれば接続を遮断。 |
従来のリモートアクセスとの違い
従来のリモートアクセスでは、社員証とパスワードを入力することで、会社のネットワークに接続するのが一般的でした。これは、家の鍵を開けるのに、鍵一つだけを使うようなもので、セキュリティの面で不安がありました。確かに、会社のネットワークに入る際の通信を暗号化する仕組みもありますが、もしもパソコン自体が悪意のあるソフトウェアに感染していた場合、情報漏えいのリスクは避けられません。
一方、IAPは、アプリケーションレベルで利用者の本人確認とアクセス権の確認を行うため、より厳密なアクセス制御を実現できます。例えるなら、家の鍵に加えて、部屋ごとに異なる鍵をかけるようなもので、より高いセキュリティを確保できます。また、IAPは通信自体を暗号化するため、インターネットを経由する場合でも安全にアプリケーションを利用できます。つまり、IAPは従来の方法と比べて、多層的なセキュリティ対策を施しており、より安全に会社のシステムやデータにアクセスできると言えるでしょう。
項目 | 従来のリモートアクセス | IAP |
---|---|---|
認証方式 | 社員証とパスワード | アプリケーションレベルでの本人確認とアクセス権の確認 |
セキュリティレベル | 低い (鍵1つ) | 高い (鍵複数) |
通信の暗号化 | 一部対応 (ネットワークレベル) | 常時対応 (通信レベル) |
マルウェア感染時のリスク | 高い | 低い |
安全性 | 低い | 高い |
アイデンティティ認識型プロキシのメリット
– アイデンティティ認識型プロキシの利点近年、働く場所を選ばない働き方が広がり、企業システムへのアクセス手段も多様化しています。それに伴い、従来の境界型セキュリティ対策では、社内システムへの不正アクセスを防ぎきれないケースが増えています。このような背景から、ユーザの認証をシステムへのアクセス許可に直接結び付ける、「アイデンティティ認識型プロキシ(IAP)」が注目されています。 ここでは、IAP導入による具体的なメリットを三点ご紹介します。第一に、社外から社内システムへアクセスする際に、ユーザの本人確認とアクセス権限の確認を厳密に行うことで、セキュリティ上の危険を減らすことができます。従来の技術では、社内ネットワークに接続した後は、許可された範囲内であれば自由にシステムやデータにアクセスできてしまう場合がありました。しかし、IAPではアプリケーションごとにアクセスを制御するため、より安全なアクセスを実現できます。例えば、人事部所属の社員だけが、給与情報データベースへのアクセスを許可されるといった細やかな制御が可能になります。第二に、近年多くの企業で利用が広がる、インターネット経由でサービスを提供するソフトウェアに対しても、安全なアクセス手段を提供できます。このソフトウェアは、従来型のセキュリティ対策では十分に保護できない場合がありましたが、IAPを利用することで、安全なアクセス環境を構築できます。利用者がインターネット上のどこからアクセスする場合でも、常に同じセキュリティポリシーを適用できるため、安心して業務システムを利用できます。第三に、自社で保有するサーバーやネットワークなどのシステムに対しても、安全なアクセスを実現できます。IAPは、社内システムに専用の接続装置を設置することで、従来の接続方式と同様の利便性を保ちながら、より安全なリモートアクセス環境を実現できます。社外から社内システムへのアクセス経路を一本化することで、セキュリティ管理を一元化し、管理コストの削減も見込めます。
利点 | 説明 |
---|---|
セキュリティの向上 | ユーザの本人確認とアクセス権限の確認を厳密に行うことで、セキュリティ上の危険を減らす。アプリケーションごとにアクセスを制御するため、より安全なアクセスを実現。 |
クラウドサービスへの安全なアクセス | インターネット経由でサービスを提供するソフトウェアに対しても、安全なアクセス手段を提供。利用者がインターネット上のどこからアクセスする場合でも、常に同じセキュリティポリシーを適用できる。 |
社内システムへの安全なアクセスと管理コスト削減 | 自社で保有するサーバーやネットワークなどのシステムに対しても、安全なアクセスを実現。社外から社内システムへのアクセス経路を一本化することで、セキュリティ管理を一元化し、管理コストの削減も見込める。 |
アイデンティティ認識型プロキシの主な機能
アイデンティティ認識型プロキシ(IAP)は、ユーザーのアクセス制御やセキュリティ強化を目的としたシステムであり、企業の機密情報やアプリケーションへのアクセスを保護する上で重要な役割を担っています。IAPは、従来型のプロキシサーバーとは異なり、ユーザーの身元(アイデンティティ)に基づいてアクセス制御を行う点が特徴です。
IAPの主な機能として、まず挙げられるのが多要素認証です。これは、ユーザーがアクセスする際に、パスワードだけでなく、スマートフォンアプリで生成されるワンタイムパスワードや、生体認証などの追加認証を組み合わせることで、セキュリティ強度を格段に向上させることができます。
次に、シングルサインオン機能があります。ユーザーは、一度IAPにログインすれば、その後は他の連携されたアプリケーションやサービスに、再度認証情報を入力することなくアクセスすることが可能になります。これは、ユーザーの利便性を向上させるだけでなく、パスワード入力の手間を減らすことで、セキュリティリスクの低減にもつながります。
さらに、アクセス制御リスト機能も重要な役割を担います。管理者は、ユーザーやグループごとに、アプリケーションやリソースへのアクセス権限をきめ細かく設定することができます。例えば、特定の部署のユーザーに対してのみ、機密性の高い情報へのアクセスを許可するといった設定が可能です。
そして、脅威検知機能も備えています。IAPは、ユーザーのアクセスログや端末情報などを常時監視し、不正アクセスの疑いがある場合には、管理者にアラートを通知したり、自動的にアクセスを遮断したりすることができます。これは、近年増加傾向にある、標的型攻撃やゼロデイ攻撃などの巧妙化するサイバー攻撃から、企業の重要な情報を守る上で非常に有効な手段となります。
機能 | 説明 |
---|---|
多要素認証 | パスワードに加えて、ワンタイムパスワードや生体認証などを組み合わせることで、セキュリティ強度を高めます。 |
シングルサインオン | 一度IAPにログインすれば、他の連携サービスへもシームレスにアクセスできます。利便性とセキュリティ強化を両立します。 |
アクセス制御リスト | ユーザーやグループごとに、アプリケーションやリソースへのアクセス権限を細かく設定できます。 |
脅威検知 | アクセスログや端末情報を監視し、不正アクセスの疑いがあればアラート通知やアクセス遮断を行います。 |
ゼロトラストモデルとの関連性
近年、企業の機密情報を守るための対策として、「ゼロトラスト」という考え方が注目されています。
これは従来の「境界型防御」とは異なり、社内と社外の境界線をあいまいにし、あらゆるアクセスを信頼せず、常に確認するというものです。
従来は、会社のネットワークの内側だけを安全な場所として守り、外部からの侵入を防ぐことに重点を置いていました。しかし、今ではクラウドサービスの利用や在宅勤務の普及により、社内と社外の境界線が曖昧になってきています。
このような状況では、従来型の境界を守るだけでは十分ではなく、どこからアクセスがあっても、それが許可された人や端末からのみであることを確認することが重要になってきます。
そこで、ゼロトラストモデルにおいて重要な役割を担うのがIAPです。IAPは、アクセスしようとする人や端末が適切な権限を持っているかを厳密に確認することで、不正なアクセスを防ぎます。
ゼロトラストを実現するためには、IAPのように、あらゆるアクセスに対して認証と許可を徹底する仕組みが必要不可欠と言えるでしょう。
項目 | 従来型セキュリティ | ゼロトラストセキュリティ |
---|---|---|
概念 | 境界の内側を安全地帯として保護する「境界型防御」 | あらゆるアクセスを信頼せず、常に確認する |
対策の重点 | 外部からの侵入を防ぐ | アクセス元の信頼性を問わず、常に認証と許可を確認 |
有効な場面 | 社内ネットワークと社外ネットワークの境界が明確な場合 | クラウドサービス利用や在宅勤務など、境界が曖昧な場合 |
ゼロトラスト実現のための重要要素 | – | IAP(あらゆるアクセスに対して認証と許可を徹底する仕組み) |