パスワードハッシュを悪用した攻撃:パス・ザ・ハッシュ攻撃とは?
セキュリティを高めたい
「パス・ザ・ハッシュ攻撃」って、どんな攻撃なんですか?名前だけ聞くと、よくわからないんですけど…
情報セキュリティ専門家
そうですね。「パス・ザ・ハッシュ攻撃」は、例えるなら、合鍵を使わずに、鍵の複製を使ってドアを開けるようなものなんです。
セキュリティを高めたい
鍵の複製、ですか?でも、パスワードそのものを盗むんじゃなくて、どうやって複製を使うんですか?
情報セキュリティ専門家
実は、コンピュータはパスワードそのものではなく、パスワードを複雑に変換した「ハッシュ値」を使って、本人確認をする場合があるんです。この攻撃は、その「ハッシュ値」を盗んで、本人になりすましてしまう攻撃なんです。
パス・ザ・ハッシュ攻撃とは。
「情報の安全を守るための言葉に、『パスワードの影を使った攻撃』というものがあります。これは、主にウィンドウズの確認システムを狙った攻撃です。攻撃者は、パスワードの影を手に入れることで、本来の利用者や管理者のパスワードを知らなくても、確認をすり抜け、横展開を行います。ウィンドウズで使われているエルエムやエヌティーエルエムという確認方法は、入力されたパスワードを影に変え、その影の値をシステムの決まった場所に保存します。攻撃者は、『ミミカツ』のような攻撃道具を使い、保存された影の値を手に入れます。そうすることで、パスワードそのものを手に入れなくても、影の値を使うことでシステムの確認を突破できてしまいます。ウィンドウズは、より安全な確認方法としてカーベロスを採用していますが、パスワードの影を使った攻撃で得た権限を元に、カーベロスの確認を破る方法として、パスワードの切符を使った攻撃が生まれました。なお、エヌティーエルエム認証は現在もウィンドウズの一部の機能で使われているため、この攻撃は有効性を保っています。」
Windows認証の仕組みと弱点
コンピュータへのアクセスを管理し、許可されていない人物の侵入を防ぐ仕組みである認証システムは、建物のセキュリティシステムと同じく、情報セキュリティの土台となる重要な要素です。WindowsOSを搭載したコンピュータでは、かつてLM認証やNTLM認証と呼ばれる方法でユーザーの確認を行っていました。
これらの認証方法では、ユーザーが設定したパスワードを、意味のない文字列に変換するハッシュ化という技術を用いていました。ハッシュ化は、パスワードを直接保存することなく、安全性を高めるための工夫でした。しかし、このハッシュ化されたパスワードが悪意のある第三者に盗まれてしまうと、本来のパスワードを知らなくても、コンピュータシステムに不正に侵入できてしまうという弱点が存在していました。ハッシュ化されたパスワードは、解読が難しいとはいえ、時間をかけて解析を試みられる可能性があり、セキュリティ上のリスクとして認識されるようになりました。
そのため、より安全性の高い認証方法として、現在ではKerberos認証や証明書認証といった、より複雑で解読困難な技術が採用されています。これらの技術は、パスワードだけでなく、専用の鍵や証明書を用いることで、なりすましや改ざんのリスクを大幅に低減させています。このように、コンピュータシステムへのアクセスを制御する認証技術は、常に進化を続けており、より安全な情報環境の実現に向けて日々進歩しています。
認証方式 | 説明 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
LM認証、NTLM認証 | パスワードをハッシュ化して保存する。 | パスワードを直接保存しないため、セキュリティが向上する。 | ハッシュ化されたパスワードが盗まれると、システムに不正侵入される可能性がある。 |
Kerberos認証、証明書認証 | パスワードに加えて、専用の鍵や証明書を使用する。 | なりすましや改ざんのリスクを大幅に低減できる。 | 複雑な仕組みであるため、導入や運用にコストがかかる場合がある。 |
パス・ザ・ハッシュ攻撃の概要
– パス・ザ・ハッシュ攻撃の概要パスワードは、インターネットサービスの利用や、社内システムへのアクセスなど、現代社会において欠かせないものです。こうした重要なパスワードを保護するために、多くのシステムでは、パスワードを直接保存するのではなく、パスワードを元にした「ハッシュ値」を生成して保存しています。ハッシュ値とは、あるデータから生成される、一方向性の暗号化された文字列のことです。パスワードが漏洩した場合でも、システムにはハッシュ値しか保存されていないため、直接的な被害を回避できます。しかし、ハッシュ値を利用した攻撃手法が存在し、その一つが「パス・ザ・ハッシュ攻撃」です。この攻撃では、攻撃者はまず、標的となるシステムに侵入し、「Mimikatz」のような特殊なツールを使ってシステムのメモリ上に残っているハッシュ値を盗み出します。そして、盗み出したハッシュ値を、あたかも正規のユーザーのパスワードであるかのように利用して、システムへの認証を突破しようと試みます。パス・ザ・ハッシュ攻撃の恐ろしい点は、攻撃者がパスワードそのものを知らなくても、ハッシュ値さえ入手できれば攻撃が成功してしまう点にあります。つまり、たとえユーザーが複雑なパスワードを設定していても、システム側でハッシュ値の保護が不十分であれば、この攻撃に対して脆弱になってしまいます。パス・ザ・ハッシュ攻撃からシステムを守るためには、強力なパスワードを設定すること以外にも、多要素認証の導入や、システムのセキュリティ更新を最新の状態に保つなど、様々な対策を講じる必要があります。
攻撃手法 | 概要 | 対策 |
---|---|---|
パス・ザ・ハッシュ攻撃 | 攻撃者がシステムに侵入し、メモリ上からハッシュ値を盗み出す攻撃。盗み出したハッシュ値を正規のパスワードのように利用してシステム認証を突破する。パスワードを知らなくても、ハッシュ値さえ入手すれば攻撃が成功する点が脅威。 | – 強力なパスワード設定 – 多要素認証の導入 – システムのセキュリティ更新 |
攻撃の展開と影響
– 攻撃の展開と影響パス・ザ・ハッシュ攻撃の恐ろしい点は、一度攻撃が成功してしまうと、その影響が連鎖的に広がっていく可能性があることです。 攻撃者は、侵入の足掛かりとしたシステムだけに留まらず、盗み出した認証情報を悪用して、まるで正規の利用者のようにネットワーク内を自由に移動できてしまいます。特に、多くのシステムへのアクセス権を持つ管理者アカウントの認証情報が盗まれた場合、被害は甚大なものとなります。 管理者権限は、システム設定の変更や重要なデータへのアクセスなど、強力な操作を可能にするため、攻撃者はこれを悪用して機密情報を探し出し盗み出すだけでなく、システム自体を改ざんしたり、悪意のあるプログラムを仕込んだりすることが可能になります。このように、パス・ザ・ハッシュ攻撃は、企業や組織にとって、情報漏えいやシステムの不正利用、業務の妨害など、広範囲にわたる被害をもたらす深刻な脅威となる可能性があります。
フェーズ | 攻撃の詳細 | 影響 |
---|---|---|
攻撃の展開 | 攻撃者が侵入の足掛かりとしたシステムの認証情報を盗む。 | – 攻撃者は盗んだ認証情報を使って、正規の利用者のようにネットワーク内を移動できる。 – 特に、管理者アカウントの認証情報が盗まれた場合、被害は甚大になる。 |
影響 | – 攻撃者は管理者権限を悪用して、機密情報を探し出し盗み出す。 – システム自体を改ざんしたり、悪意のあるプログラムを仕込んだりする。 |
– 情報漏えい – システムの不正利用 – 業務の妨害 |
対策の必要性
昨今、巧妙化するサイバー攻撃の脅威からシステムを守ることは、企業にとって喫緊の課題となっています。特に、認証情報を悪用した攻撃は増加の一途を辿っており、その中でも「パス・ザ・ハッシュ攻撃」は、従来のセキュリティ対策を無力化する危険性を孕んでいます。
パス・ザ・ハッシュ攻撃からシステムを守るためには、多層的な防御を構築することが不可欠です。まず、ユーザーに対しては、複雑なパスワードの使用と定期的な変更を義務付けるとともに、パスワードを使い回さないように徹底した教育が必要です。
さらに、パスワードに加えて、スマートフォンアプリや生体認証などを組み合わせた多要素認証を導入することで、仮にパスワードが漏洩した場合でも、攻撃者がシステムに侵入することを困難にすることができます。
また、システム側では、常に最新のセキュリティパッチを適用し、脆弱性を解消することが重要です。合わせて、「Mimikatz」のような攻撃ツールが使われた形跡がないか、ログを監視する体制を整え、早期発見と迅速な対応に努める必要があります。
これらの対策を講じることで、パス・ザ・ハッシュ攻撃のリスクを大幅に低減し、システムの安全性を高めることができます。
対策項目 | 具体的な対策内容 |
---|---|
ユーザーへの対策 |
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認証の強化 | パスワードに加え、スマートフォンアプリや生体認証などを組み合わせた多要素認証の導入 |
システム側の対策 |
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より安全な認証方式への移行
昨今、パスワードの漏洩が後を絶ちません。従来のパスワード認証方式には、「パス・ザ・ハッシュ」攻撃といったセキュリティ上のリスクが存在します。これは、古い認証方式であるLM認証やNTLM認証の脆弱性を突いたもので、悪意のある第三者にパスワードの情報を盗み見られてしまう可能性があります。
このようなリスクを回避するために、より安全性の高い認証方式への移行が急務となっています。その有効な手段の一つが「Kerberos認証」です。Kerberos認証では、パスワード自体をネットワーク上に流すのではなく、時間制限のある「チケット」を用いることで、なりすまし攻撃を困難にします。たとえ悪意のある第三者がネットワークを盗聴していても、有効期限の切れた「チケット」は利用できないため、セキュリティを担保することができます。
ただし、Kerberos認証も万能ではありません。セキュリティ技術は常に進化しており、Kerberos認証にも脆弱性が発見される可能性はあります。そのため、常に最新のセキュリティ情報に目を光らせ、必要に応じてシステムの更新や適切な対策を講じることが重要です。
認証方式 | メリット | デメリット | 対策 |
---|---|---|---|
従来のパスワード認証(LM認証、NTLM認証) | – | パス・ザ・ハッシュ攻撃に脆弱 パスワードが盗み見られる可能性あり |
Kerberos認証など、より安全性の高い認証方式への移行 |
Kerberos認証 | パスワードをネットワーク上に流さない 時間制限のある「チケット」を用いることで、なりすまし攻撃を困難にする |
脆弱性が発見される可能性がある | 常に最新のセキュリティ情報に目を光らせる 必要に応じてシステムの更新や適切な対策を講じる |