サイバー防衛の最前線:アクティブ・ディフェンスとは?

サイバー防衛の最前線:アクティブ・ディフェンスとは?

セキュリティを高めたい

「アクティブ・ディフェンス」って、最近よく聞くけど、具体的にどんなことをするんですか?

情報セキュリティ専門家

「アクティブ・ディフェンス」は、従来の守りに入って攻撃を待つだけの防御ではなく、積極的に攻撃側に仕掛けをすることで被害を防ぐ考え方だよ。例えば、わざと偽物の情報を置いておいて攻撃者を誘い込んだり、攻撃してきた相手を逆に追跡したりするんだ。

セキュリティを高めたい

へえー、なんだかスパイみたいでかっこいいですね!でも、相手を攻撃したりするのは法律に触れないんですか?

情報セキュリティ専門家

そこが難しいところで、日本ではまだ法律が追いついていない部分もあるんだ。だから、どこまでやっていいのか、線引きが課題になっているんだよ。

アクティブ・ディフェンスとは。

「積極的な守り」という意味の「アクティブ・ディフェンス」は、攻撃から身を守るための新しいセキュリティ対策のことです。

これは、罠をしかけて敵を騙したり、場合によっては反撃したりするなど、従来の守りよりも踏み込んだ方法です。

アメリカやイギリスではすでに国として採用されていますが、日本では2022年から導入に向けて議論が始まったばかりです。

日本では、現行の法律では通信の監視や有害なプログラムの作成、ネットワークへの不正侵入が禁止されているため、これらの規制をどうクリアするかが課題となっています。

なお、「アクティブ・ディフェンス」と似た言葉に「アクティブ・サイバー・ディフェンス」がありますが、こちらは攻撃や反撃を含むものではなく、あくまで守りの考え方を示す言葉として、日本国内で検討されているものとは意味合いが異なります。

アメリカでは、国を守るための活動における方法の一つとして位置付けられており、イギリスでは、たくさんの人を狙った攻撃を防ぐための活動として、情報提供や注意喚起、訓練やセキュリティツールの配布などを行っています。

従来の防御を超えて

従来の防御を超えて

従来のサイバーセキュリティ対策は、お城の高い城壁のように、侵入を防ぐことを第一に考えてきました。しかし、攻撃の戦略は日々高度化しており、完全に侵入を防ぐことはますます難しくなっています。そこで、新たな考え方として「アクティブ・ディフェンス」が登場しました。

アクティブ・ディフェンスは、侵入を許さないという従来の防御体制から考え方を変え、侵入されても被害を最小限に抑えることに重点を置いた、より積極的なアプローチです。

この手法では、攻撃者を早期に発見し、その動きを監視することで、重要な情報へのアクセスを阻止したり、被害が拡大する前に食い止めたりします。具体的には、おとりのシステムを構築して攻撃者を誘導したり、攻撃者の行動を分析して攻撃パターンを特定したりするなど、さまざまな技術が活用されます。

従来型の防御策とアクティブ・ディフェンスを組み合わせることで、より強固なセキュリティ体制を構築することが可能となります。

項目 従来のサイバーセキュリティ対策 アクティブ・ディフェンス
考え方 侵入を防ぐことを第一に考える 侵入されても被害を最小限に抑える
特徴 – 城壁のように高い防御体制
– 侵入を完全に防ぐことを目指す
– 侵入を前提とした、より積極的なアプローチ
– 攻撃者の早期発見と行動監視
– 被害拡大の阻止
具体的な技術 – ファイアウォール
– 侵入検知システム(IDS)など
– おとりシステム
– 攻撃者の行動分析
– 攻撃パターン特定など

アクティブ・ディフェンスの戦略

アクティブ・ディフェンスの戦略

– アクティブ・ディフェンスの戦略

従来の情報セキュリティ対策は、ファイアウォールや侵入検知システムなどを用いて、攻撃を防御することに重点が置かれていました。しかし、攻撃側の技術は日々高度化しており、防御側が受け身である限り、完全に攻撃を防ぐことは困難になりつつあります。

そこで注目されているのが「アクティブ・ディフェンス」という考え方です。これは、受動的に攻撃を防ぐだけでなく、攻撃者を積極的に欺いたり、混乱させたりすることで、被害を最小限に抑えようとする、より積極的なセキュリティ対策です。

具体的な方法としては、以下のようなものがあります。

* -おとりの設置- 攻撃者にとって魅力的に見える偽のシステムやデータを用意し、そこへ誘導することで、攻撃者の時間を奪ったり、行動を分析したりします
* -攻撃元の追跡- 攻撃を受けた際、その攻撃元を特定するために、ログ分析やパケット解析などの技術を用いて追跡調査を行います

アクティブ・ディフェンスは、従来の防御的な対策とは異なり、攻撃者に積極的に対抗していくという点で、リスクも伴います。しかし、高度化するサイバー攻撃から重要な情報資産を守るためには、攻撃者を抑止する効果も期待できるアクティブ・ディフェンスの導入を検討する必要が高まっていると言えるでしょう。

アクティブ・ディフェンスの戦略 概要
おとりの設置 攻撃者にとって魅力的に見える偽のシステムやデータを用意し、そこへ誘導することで、攻撃者の時間を奪ったり、行動を分析したりする。
攻撃元の追跡 攻撃を受けた際、その攻撃元を特定するために、ログ分析やパケット解析などの技術を用いて追跡調査を行う。

欧米における導入状況

欧米における導入状況

– 欧米における導入状況近年、世界各国でサイバー攻撃の脅威が増大する中、欧米諸国では、その対策として「アクティブ・ディフェンス」と呼ばれる積極的な防御策の導入を検討しています。特に、アメリカやイギリスは国家レベルでこの戦略を推進しており、サイバー攻撃に対する抑止力を強化しようとしています。アクティブ・ディフェンスは、従来の受動的な防御態勢から一歩踏み込み、攻撃者を特定し、その攻撃拠点を無力化するなど、より能動的にサイバー攻撃に対抗しようとするものです。しかし、この手法は、他国のネットワークへの侵入や攻撃とみなされる可能性もあり、国際法上の問題や、報復攻撃の連鎖による事態のエスカレートといったリスクも孕んでいます。そのため、アクティブ・ディフェンスの導入には、法的根拠や倫理的な側面からの慎重な議論が不可欠です。実際に、欧米諸国においても、その是非や適用範囲については、専門家の間で意見が分かれています。具体的には、民間企業による自衛権の範囲、国家による攻撃への関与の度合い、国際的な連携体制の構築といった課題が山積しており、これらの問題を解決しない限り、アクティブ・ディフェンスを本格的に導入することは難しいと言えます。欧米諸国は、サイバーセキュリティの強化と国際的な協調を図りながら、アクティブ・ディフェンスの導入について慎重に検討を進める必要があります。

項目 内容
導入背景 サイバー攻撃の脅威増加に対する対策
主体 欧米諸国、特にアメリカ、イギリス
内容 攻撃者を特定し、攻撃拠点を無力化するなど、従来の受動的な防御から、より能動的にサイバー攻撃に対抗
メリット サイバー攻撃に対する抑止力の強化
デメリット・課題
  • 他国のネットワークへの侵入や攻撃とみなされる可能性
  • 国際法上の問題
  • 報復攻撃の連鎖による事態のエスカレートのリスク
  • 法的根拠や倫理的な側面からの議論
  • 民間企業による自衛権の範囲
  • 国家による攻撃への関与の度合い
  • 国際的な連携体制の構築
今後の展望 サイバーセキュリティの強化と国際的な協調を図りながら、慎重に検討を進める必要あり

日本における課題と展望

日本における課題と展望

– 日本における課題と展望2022年より、我が国においても、能動的な防御策であるアクティブ・ディフェンスの導入に向けた検討が開始されました。これは、サイバー攻撃の手法が複雑化・巧妙化する一方、従来の受動的な防御策だけでは、攻撃を完全に防ぐことが困難になっているという現状を踏まえたものです。

しかしながら、我が国においてアクティブ・ディフェンスを導入するには、いくつかの大きな課題が存在します。

まず、現行の法制度において、アクティブ・ディフェンスの実施が制限されている点が挙げられます。具体的には、通信の秘密を侵害する行為や、不正アクセス禁止法に抵触する行為が、アクティブ・ディフェンスの過程において発生する可能性があります。

例えば、攻撃者を特定するために、攻撃元のサーバーにアクセスする行為は、不正アクセス禁止法違反に該当する可能性があります。

また、攻撃者の情報を収集するために、通信内容を傍受する行為は、通信の秘密を侵害する可能性があります。

このように、現行法では、正当な防御行為であっても、攻撃者への反撃やハッキング行為が制限されているため、アクティブ・ディフェンスの導入にあたっては、法整備の検討が不可欠となります。

さらに、アクティブ・ディフェンスは、攻撃者への反撃を行うという性質上、その実施には国民的な理解と合意形成が不可欠となります。そのため、導入に当たっては、国民に対してアクティブ・ディフェンスの必要性やリスクなどを丁寧に説明し、理解と合意を得るための取り組みを進める必要があります。

このように、我が国におけるアクティブ・ディフェンス導入には、法整備や社会的な合意形成など、多くの課題が存在します。

しかし、サイバーセキュリティの重要性が増大する中、我が国も、国際的な動向を踏まえながら、能動的な防御策の導入について、積極的に検討していく必要があります。

課題 内容
法制度 アクティブ・ディフェンスの実施が、現行法では制限されている。 – 攻撃元サーバーへのアクセス:不正アクセス禁止法違反の可能性
– 通信内容の傍受:通信の秘密侵害の可能性
社会的な合意形成 攻撃者への反撃という性質上、国民的な理解と合意が不可欠。 – アクティブ・ディフェンスの必要性やリスクに関する説明
– 理解と合意を得るための取り組み

新たな防衛体制の構築に向けて

新たな防衛体制の構築に向けて

近年、技術の進歩に伴い、サイバー攻撃はますます高度化・巧妙化しており、企業や政府機関など、規模の大小を問わず、あらゆる組織がその脅威にさらされています。従来の防御策だけでは、これらの攻撃を完全に防ぐことは難しく、新たな対策が求められています。

このような状況下において、注目を集めているのが「能動的防御」という考え方です。これは、攻撃をただ待ち受けるのではなく、こちらから積極的に攻撃元を特定し、無力化するというものです。しかし、この手法は、他国への攻撃とみなされる可能性や、民間企業が攻撃を行うことの是非など、法的な整備や倫理的な問題解決が不可欠です。

そのため、能動的防御の導入には、国民的な議論による合意形成が欠かせません。政府は、国民に対して、能動的防御の必要性やリスク、具体的な対策などを丁寧に説明し、理解を得る努力をしなければなりません。そして、国際的な動向を踏まえつつ、慎重かつ積極的に検討を進め、日本独自の安全保障体制を構築していく必要があります。

課題 対策
サイバー攻撃の高度化・巧妙化 能動的防御の導入

  • 攻撃元を特定し、無力化する
能動的防御における課題

  • 他国への攻撃とみなされる可能性
  • 民間企業が攻撃を行うことの是非
  • 法的な整備や倫理的な問題
  • 国民的な議論による合意形成
  • 政府による国民への丁寧な説明
  • 国際的な動向を踏まえた慎重かつ積極的な検討
  • 日本独自の安全保障体制の構築