企業を守る! インシデントレスポンスとは

企業を守る! インシデントレスポンスとは

セキュリティを高めたい

「インシデントレスポンス」って言葉、セキュリティの本でよく見るんだけど、何だか難しそうで…簡単に言うと、どんな意味なの?

情報セキュリティ専門家

そうだね。「インシデント」は、例えばパソコンの故障やウイルス感染みたいに、大きな問題に発展しそうな出来事のことなんだ。「レスポンス」は「対応」って意味だね。つまり「インシデントレスポンス」は、問題が起きた時に、どう対処するかを決めておくことなんだよ。

セキュリティを高めたい

なるほど!じゃあ、パソコンがウイルスに感染しちゃったら、どうすればいいか、あらかじめ決めておくってこと?

情報セキュリティ専門家

その通り!ウイルス感染した時に備えて、データをバックアップする方法を決めておいたり、セキュリティソフトを導入しておくのも立派な「インシデントレスポンス」なんだよ。

インシデントレスポンスとは。

「情報セキュリティの大切な言葉、『インシデントレスポンス』について説明します。これは、問題が起きた時に、適切に対処することを指します。ここでいう『インシデント』とは、大きな事件や事故につながる可能性のある、ミスや不具合のことです。特に、コンピューターやネットワークのセキュリティにおいては、問題が起こることを常に想定し、事前に対策を立てておくことが重要とされています。アメリカにある、ITセキュリティの教育機関であるSANSInstituteは、問題発生時の対応を体系的に行うために、6つの段階(準備、特定、封じ込め、根絶、復旧、教訓)を提唱しています。また、アメリカの国立標準技術研究所は、組織が備えるべき問題対応能力として、いくつかの項目を重視しています。特に、ITシステムを危険にさらすサイバー攻撃は、日々巧妙になっているため、完全に防ぐことは不可能です。そのため、問題が起きた際に対応できる能力と体制、つまり『インシデントレスポンス・サイクル』を築くことが求められています。さらに、問題発生時の対応過程で行われる、問題の特定や復旧、調査などの活動、例えば記録の調査や分析、メモリーやディスクイメージの取得と分析、不正なプログラムの分析などは、『デジタル・フォレンジック』という分野と重なる部分があります。これらを合わせて『DFIR(Digital Forensics and Incident Response)』と呼ぶこともあります。

インシデントレスポンスの基礎

インシデントレスポンスの基礎

情報漏えいやシステムの停止など、企業にとってセキュリティに関する問題は、今や避けて通れないものとなっています。このような問題が発生した時に、素早く的確に対処することで被害を最小限に食い止め、事業を継続するために「インシデントレスポンス」という取り組みが重要視されています。これは、いわば企業の危機管理能力の一つと言えるでしょう。近年、悪意のある攻撃はますます巧妙化し、複雑化しており、企業は常に危険にさらされています。そのため、いざという時に慌てないために、事前にどのような対応を取るべきか計画を立て、組織全体で対応できる体制を整えておくことが重要です。

インシデントレスポンスでは、問題発生時の初動対応が極めて重要です。まず、問題が発生したことをいち早く認識し、関係部署や責任者に報告する必要があります。次に、被害状況を把握し、影響範囲を特定することが重要です。被害が拡大しないよう、必要に応じてシステムの停止やネットワークの遮断などの措置を迅速に講じなければなりません。また、原因究明を行い、再発防止策を検討することも重要です。インシデントレスポンスは、単なる技術的な対策ではなく、組織全体で取り組むべき課題です。そのため、日頃から訓練や教育を通じて、社員一人ひとりの意識を高め、いざという時に適切に行動できるよう準備しておくことが重要です。

具体的な対応手順

具体的な対応手順

情報セキュリティ上の問題が発生した際の対応は、大きく分けて六つの段階を踏んで行われます。まずは、問題が発生する前に、あらかじめ備えておく「準備」段階です。この段階では、問題発生時の対応手順をまとめた計画書を作成したり、実際に誰がどのように対応するかといった体制を整えたり、問題発生時の対応訓練を実施したりします。次に、「特定」段階では、実際に問題が発生した際に、それが本当に対応が必要な問題なのかどうかを判断し、問題の種類や規模を明確化します。そして、「封じ込め」段階では、被害が拡散するのを防ぐために、影響が及んでいる範囲を特定し、隔離などの措置を講じます。その後の「根絶」段階では、問題の原因を徹底的に究明し、それを取り除く作業を行います。さらに「復旧」段階では、問題の影響を受けたシステムやデータを復旧し、通常の状態に戻していきます。最後に「教訓」として、発生した問題を分析し、同じ問題が二度と発生しないように再発防止策を検討します。これらの段階を踏むことで、情報セキュリティ上の問題発生時にも、落ち着いて適切な対応をとることができます。

段階 内容
準備 – 問題発生時の対応手順をまとめた計画書の作成
– 対応体制の整備
– 問題発生時の対応訓練の実施
特定 – 問題の発生有無の判断
– 問題の種類や規模の明確化
封じ込め – 影響範囲の特定
– 隔離などの措置の実施
根絶 – 問題の原因究明
– 問題原因の除去
復旧 – 影響を受けたシステムやデータの復旧
– 通常状態への復帰
教訓 – 発生した問題の分析
– 再発防止策の検討

組織における重要性

組織における重要性

組織にとって、問題が発生した際の対応は、企業の評判や顧客の信頼を維持する上で非常に重要です。問題が発生した場合、迅速かつ適切に対応することで、顧客や取引先との良好な関係を保ち、信頼を失わずに済みます。 逆に、対応が遅れたり、不適切な対応をしてしまった場合には、企業の評判に大きな傷がつく可能性があり、顧客離れや取引の停止につながることもあります。
また、個人情報保護法などの法令を遵守するためにも、問題発生時の適切な対応は必須です。 個人情報の漏洩や紛失などの問題が発生した場合、法令に基づいた適切な手続きで対応しなければ、企業は罰金や行政処分を受ける可能性があります。
企業は、問題発生による様々なリスクを理解し、適切な対策を講じる必要があります。そのためには、事前に問題発生時の対応手順を明確化し、担当者への教育や訓練を定期的に実施することが重要です。また、問題発生時に備え、関係部署間で連携体制を構築しておくことも大切です。

問題発生時の対応 メリット デメリット
迅速かつ適切な対応 – 顧客や取引先との良好な関係を維持
– 信頼の維持
対応の遅延や不適切な対応 – 企業の評判失墜
– 顧客離れ
– 取引停止
– 法令違反による罰金や行政処分

デジタルフォレンジックとの関係

デジタルフォレンジックとの関係

セキュリティ事案への対応を行う「事案対応」は、デジタルの世界で起きた問題解決に欠かせない活動です。この活動と密接な関わりを持つ技術に、「デジタルフォレンジック」があります。これは、コンピュータやネットワーク上に残された電子的な記録を収集・分析し、不正アクセスや情報漏えいなどの証拠を保全する技術です。まるで、事件現場に残された痕跡を調べる捜査のように、デジタルの世界の出来事を明らかにします。

事案対応において、デジタルフォレンジックは強力な武器となります。デジタルフォレンジックを用いることで、事案の原因究明、攻撃者の特定、被害状況の把握などが可能になるからです。例えば、不正アクセスの痕跡を辿ることで、攻撃者がどのように侵入し、どの情報を盗み出したのかを明らかにできます。また、マルウェア感染の原因を突き止め、再発防止策を立てることも可能です。

近年では、事案対応とデジタルフォレンジックを組み合わせた「DFIR(Digital Forensics and Incident Response)」という分野が注目されています。これは、事案発生時の初動対応から、その後の詳細な調査、再発防止策の実施までを一貫して行うことで、より迅速かつ効果的なセキュリティ対策を実現しようというものです。このように、デジタルフォレンジックは、事案対応と密接に連携することで、企業や組織のセキュリティを守る上で重要な役割を担っています。

用語 説明 活用例
事案対応 デジタルの世界で起きたセキュリティ問題の解決活動
デジタルフォレンジック コンピュータやネットワーク上の電子的な記録を収集・分析し、証拠を保全する技術 – 不正アクセスの痕跡追跡
– マルウェア感染の原因究明
DFIR (Digital Forensics and Incident Response) 事案対応とデジタルフォレンジックを組み合わせ、事案発生から再発防止までを一貫して行う分野

変化への対応

変化への対応

昨今、悪意のある攻撃を仕掛ける側の技術は日々高度化しており、それに伴い、発生したインシデントへの対処も常に変化していく必要に迫られています。最新の脅威に関する情報や攻撃手法を常に収集し、状況の変化に応じて対応策を更新していくことが重要です。
例えば、ランサムウェアによる攻撃は、従来型のウイルス対策ソフトでは検知・防御が難しいケースが増えてきています。そのため、最新の脅威情報と照らし合わせ、より高度な検知機能を持つセキュリティ対策製品を導入するなどの対策が必要となります。
また、自社のシステム環境や事業内容のリスクに応じて、柔軟に対応していくことも求められます。例えば、金融機関のように機密性の高い情報を扱う企業であれば、標的型攻撃メール対策や不正アクセス対策に重点を置く必要があるでしょう。一方で、ECサイトのように顧客情報を多く扱う企業であれば、個人情報漏えい対策に力を入れる必要があるでしょう。
このように、企業は、セキュリティ対策を継続的に見直し、改善していくことが重要です。

脅威 対策
高度化する攻撃技術 最新の脅威情報や攻撃手法を収集し、状況に応じた対応策を更新していく
ランサムウェアによる攻撃の増加 最新の脅威情報に基づき、高度な検知機能を持つセキュリティ対策製品を導入する
標的型攻撃メールによる情報漏えいリスク 標的型攻撃メール対策や不正アクセス対策を強化する (金融機関など)
顧客情報漏えいリスク 個人情報漏えい対策に注力する (ECサイトなど)