見過ごされる脅威:環境寄生型攻撃とその対策
セキュリティを高めたい
「環境寄生型」って、どんな攻撃なんですか?名前から想像できないです。
情報セキュリティ専門家
良い質問ですね。「環境寄生型」は、元々ある場所に居候して、その場のものを利用して生活するイメージです。情報セキュリティでは、コンピュータの中に元々入っているツールや機能を悪用した攻撃を指します。
セキュリティを高めたい
なるほど。元々入っているものを使うなら、見つけるの難しそうですね。
情報セキュリティ専門家
その通りです。まるで、そこに住んでいる人になりすましているようなものなので、見破るのは容易ではありません。だからこそ、日頃から怪しい行動がないか注意深く監視することが重要になってきます。
環境寄生型とは。
「環境寄生型」攻撃という言葉は、情報セキュリティーの世界で使われます。これは、元々英語の「Living off the Land」を略した「LotL攻撃」の日本語訳です。この攻撃は、ウイルスや悪意のあるプログラムを使うのではなく、セキュリティー対策ソフトやコンピューターの基本ソフトに元々備わっている機能を不正に利用します。「Living off the Land」は、食料や生活に必要なものを現地で調達することを意味しますが、不正にアクセスした相手のシステムをそのまま利用する様子に似ていることから、この名前が付けられました。よく悪用されるセキュリティー対策ソフトには「Mimikatz」や「cobaltstrike」などがあり、基本ソフトの機能では「WMI」や「PowerShell」などが悪用されるケースがあります。この「環境寄生型」攻撃は、従来のウイルス攻撃と比べて発見が難しいため、対策としては、システムや利用者の行動を分析する技術が必要とされています。
環境寄生型攻撃とは
– 環境寄生型攻撃とは
環境寄生型攻撃は、まるでその土地に潜む寄生虫のように、標的にしたコンピュータシステム内に元から存在するツールや機能を悪用するサイバー攻撃です。外部からウイルスなどの悪意のあるプログラムを持ち込む従来の攻撃とは異なり、正規のプログラムやコマンドを巧みに利用するため、発見が非常に困難です。
攻撃者は、システム管理者が日常的に使用する管理ツールや、あらかじめシステムに組み込まれているコマンド、プログラムを実行するための仕組みなどを悪用します。これらのツールや機能は、本来はシステムの運用や管理のために使われるものですが、攻撃者の手にかかると、情報を盗み出したり、システムを操作したりするための道具に変貌してしまいます。
環境寄生型攻撃は、その特性上、従来のセキュリティ対策では検知が難しいという大きな問題点があります。セキュリティソフトは、既知のウイルスのパターンと照らし合わせることで、悪意のあるプログラムを検知します。しかし、環境寄生型攻撃では正規のツールや機能が使われるため、セキュリティソフトは攻撃として認識できません。
このように、環境寄生型攻撃は、従来の攻撃とは異なる巧妙さと、検知の難しさから、近年、その脅威が深刻化しています。
攻撃手法 | 特徴 | 対策の難しさ |
---|---|---|
環境寄生型攻撃 | 標的システムに元から存在するツールや機能を悪用する攻撃 | 正規のツールや機能を利用するため、従来のセキュリティ対策では検知が難しい |
正規ツールが悪用される
コンピューターを不正に操作する輩は、あの手この手で私たちを出し抜こうと企んでいます。中でも特にたちが悪いのが、本来はシステムを守るための道具を悪用する「環境寄生型攻撃」と呼ばれる手法です。セキュリティ対策ソフトやシステム管理者が使う便利な道具も、悪人の手に渡れば、たちまち危険な武器と化してしまうのです。例えば、「ミミカツ」と呼ばれるソフトは、本来はパスワードの安全性を確認するために使われますが、悪用されると、コンピューターに保存されたパスワードを盗み出すことができてしまいます。また、「コバルトストライク」というソフトは、システムの弱点を見つけるために使われますが、攻撃者はこのソフトを使って、システムに侵入し、情報を盗んだり、システムを破壊したりします。これらのソフトは、本来、私たちのコンピューターを守るためのものですが、使い方次第では、逆に私たちを危険にさらす道具となってしまうのです。そのため、これらのソフトを使うには、十分な知識と注意が必要です。安易にソフトをダウンロードしたり、使い方を理解せずに使用したりすることは大変危険です。私たちは、常に最新の情報を収集し、セキュリティ対策ソフトの適切な使い方を学ぶ必要があります。そして、怪しいソフトは絶対に使用せず、信頼できる情報源からのみソフトをダウンロードするように心がけましょう。
攻撃手法 | 本来の用途 | 悪用された場合のリスク |
---|---|---|
ミミカツ | パスワードの安全性確認 | コンピューターに保存されたパスワードの盗難 |
コバルトストライク | システムの弱点発見 | システム侵入による情報盗難、システム破壊 |
巧妙化する攻撃手法
昨今、攻撃の巧妙化がますます深刻化しています。攻撃者はもはや、目立つ脆弱性を突くような単純な方法ではなく、正規のシステム機能を悪用することで、より発見されにくい攻撃を仕掛けてくるようになっています。
特に、Windowsシステムにおいては、「WMI(Windows Management Instrumentation)」や「PowerShell」といった標準搭載の機能が悪用されるケースが目立ちます。これらの機能は、本来はシステム管理や自動化を効率的に行うために用意されたものですが、裏を返せば、システムへのアクセス権限さえあれば、攻撃者が悪意のある操作を実行できてしまう危険性をはらんでいます。
例えば、攻撃者はWMIを用いることで、セキュリティソフトによる検知を回避しながら悪意のあるスクリプトを実行したり、システムの深部にアクセスして機密情報を不正に取得したりすることが可能になります。また、PowerShellも、その強力な機能ゆえに、攻撃者にとって格好のツールとして悪用されやすく、近年では、PowerShellを悪用した攻撃が急増しています。
このように、正規の機能が悪用される攻撃は、発見が難しく、被害が拡大する可能性も高いため、セキュリティ対策においては、従来のウイルス対策ソフトだけに頼るのではなく、多層的な防御体制を構築することが重要です。
悪用される正規機能 | 攻撃手法の例 | 特徴・危険性 |
---|---|---|
WMI(Windows Management Instrumentation) | ・セキュリティソフトによる検知回避 ・悪意のあるスクリプトの実行 ・システム深部へのアクセス、機密情報の不正取得 |
システム管理や自動化のための機能を悪用。 |
PowerShell | – | 強力な機能を持つため、攻撃者に悪用されやすい。近年、PowerShellを悪用した攻撃が急増。 |
検知の困難さ
– 検知の困難さ
環境寄生型攻撃は、その名の通り、まるで周囲の環境に溶け込むかのように正規のツールや機能を悪用するため、従来のセキュリティ対策では検知が非常に困難です。
従来のセキュリティ対策は、主に既知の攻撃の特徴である「シグネチャ」と呼ばれるパターンを基に、悪意のあるプログラムを検知します。しかし、環境寄生型攻撃では、悪意のあるプログラム自体が存在しないため、このシグネチャによる検知が通用しません。
環境寄生型攻撃は、一見すると通常のシステム運用と変わらないように見えるため、セキュリティ担当者でさえも見分けるのが難しい場合があります。まるで、普段通りの業務をしている従業員になりすまして、機密情報を盗み出すスパイのようなものです。
このような攻撃からシステムを守るためには、システムやユーザーの行動を詳細に分析し、普段とは異なる挙動をいち早く察知することが重要となります。例えば、アクセス権限のないファイルにアクセスしようとしたり、通常とは異なる時間に大量のデータを送信しようとした場合、環境寄生型攻撃の可能性を疑う必要があります。
項目 | 内容 |
---|---|
攻撃手法 | 正規のツールや機能を悪用し、周囲の環境に溶け込むように攻撃 |
検知の難しさ | – 悪意のあるプログラムが存在しないため、従来のシグネチャベースの検知が困難 – 見た目は通常のシステム運用と変わらず、セキュリティ担当者でも見分けるのが難しい |
例え | 普段通りの業務をしている従業員になりすまして、機密情報を盗み出すスパイ |
対策 | システムやユーザーの行動を詳細に分析し、普段とは異なる挙動をいち早く察知 例:アクセス権限のないファイルへのアクセス、通常とは異なる時間帯の大量データ送信 |
効果的な対策とは
– 効果的な対策とは
昨今、巧妙化するサイバー攻撃の脅威からシステムを守るためには、従来のセキュリティ対策に加え、より高度な対策を講じることが不可欠です。
従来型の対策は、侵入を防ぐことを主眼としていましたが、環境寄生型攻撃のような、侵入を前提とした攻撃手法に対しては効果が限定的です。
環境寄生型攻撃への効果的な対策としては、システムや利用者の行動を常に監視し、怪しい行動を検知・分析する仕組みが重要となります。
具体的には、「振る舞い検知システム」や「セキュリティ情報およびイベント管理」といったシステムの導入が有効です。
これらのシステムは、普段とは異なるアクセスや操作を検知し、管理者に警告を発します。
これにより、たとえ攻撃者がシステムに侵入を試みたとしても、早期に発見し、被害を最小限に抑えることが可能となります。
さらに、複数の認証要素を組み合わせる多要素認証や、利用者ごとのアクセス権限を最小限にするなど、基本的なセキュリティ対策を徹底することも重要です。
これらの対策は、攻撃者に付け入る隙を与えない、堅牢なシステム構築に繋がります。
環境寄生型攻撃は、その特性から検知が難しく、従来の対策が通用しないケースも少なくありません。
だからこそ、プロアクティブな対策と基本の徹底が重要となります。
脅威 | 従来の対策 | 効果的な対策 |
---|---|---|
巧妙化するサイバー攻撃、特に環境寄生型攻撃 | 侵入を防ぐことを主眼とした対策(ファイアウォールなど) | 侵入を前提とした対策 ・システムや利用者の行動を常に監視し、怪しい行動を検知・分析する仕組み ・振る舞い検知システム ・セキュリティ情報およびイベント管理 ・基本的なセキュリティ対策の徹底 ・多要素認証 ・アクセス権限の最小化 |