境界型セキュリティの限界とゼロトラスト
セキュリティを高めたい
先生、「境界防護」って、お城の周りの堀や石垣みたいなものって聞いたんですけど、どういうことですか?
情報セキュリティ専門家
なるほど!まさにイメージ通りですね。昔のお城は、堀や石垣で囲って外敵から守っていましたよね。境界防護も、ネットワークを壁(ファイアウォールなど)で囲んで、外部からの攻撃を防ぐイメージです。
セキュリティを高めたい
じゃあ、堀や石垣の中に入ったら安全ってことですか?
情報セキュリティ専門家
昔のお城で言うと、敵が堀をこえて城内に入ってしまうこともあるかもしれませんよね。現代のサイバー攻撃でも、様々な方法で境界防護を突破してくる攻撃者もいるので、常に警戒が必要です。
境界防護とは。
「境界防護」という言葉は、情報セキュリティの分野で使われる専門用語です。これは、組織内のネットワークを「安全な内側」と「安全ではない外側」に分けて考えるセキュリティ対策の方法のことです。
これまで、多くの企業では、ネットワークの境界線をVPNやファイアウォールといった技術で守る方法が主流でした。これは、境界防護の考え方に基づいた対策と言えます。
しかし、近年では、サイバー攻撃が巧妙化し、リモートワークが広まったことで、ネットワークの「内側」と「外側」の境界線が曖昧になってきました。また、クラウドサービスの普及により、データが組織のネットワークの外側に保管されるケースも増えています。
さらに、境界防護モデルでは、ネットワーク内部で起こる不正行為には対応できません。このような状況から、近年では「ゼロ・トラストモデル」と呼ばれる新しいセキュリティ対策が提唱されています。
境界を守る、従来型のセキュリティ対策
情報セキュリティの世界では、昔から「境界防護」という考え方が主流を占めてきました。これは、組織のネットワークを、安全な「内部」と危険な「外部」の二つに分けて考え、その境界線をしっかりと守ることで、組織の情報漏洩を防ごうというものです。
例えるなら、お城の外壁を高くして、敵が入って来れないようにするイメージです。具体的には、ファイアウォールやVPNといった技術が使われます。ファイアウォールは、外部からの不正なアクセスを遮断する役割を担い、VPNは、安全な通信経路を確保することで、組織の情報を守ります。
この境界防護は、仕組みがわかりやすく、導入しやすいという点から、多くの組織で採用されてきました。しかし、近年、この境界防護だけでは対応しきれない新たな脅威が出現してきています。例えば、標的型攻撃のように、巧妙な手段で内部に侵入を試みる攻撃や、クラウドサービスの利用など、従来の境界線が曖昧になるような変化に対応することが難しくなってきています。
概念 | 説明 | 例 |
---|---|---|
境界防護 | 組織のネットワークを「内部」と「外部」に分け、境界線を厳重に守ることで情報漏洩を防ぐ考え方。 | 城壁でお城を守るイメージ |
ファイアウォール | 外部からの不正アクセスを遮断する技術。 | – |
VPN | 安全な通信経路を確保することで、組織の情報を守る技術。 | – |
境界型セキュリティモデルの課題
従来のセキュリティ対策は、城壁のように組織のネットワーク境界を固め、外部からの侵入を防ぐ「境界型セキュリティモデル」を前提としてきました。これは、社内ネットワークとインターネットの境界にファイアウォールなどのセキュリティ装置を設置し、不正なアクセスを遮断する仕組みです。
しかし近年、この境界型セキュリティモデルだけでは対応が難しい状況が生まれています。
その要因として、まずサイバー攻撃の高度化が挙げられます。攻撃の手口は巧妙化しており、従来型のファイアウォールでは検知できないような、より高度な攻撃が増加しているのです。
また、ビジネス環境の変化も大きな要因です。リモートワークの普及により、従業員が組織のネットワークにアクセスする場所が多様化し、組織の境界線が曖昧になっています。さらに、クラウドサービスの利用拡大によって、顧客情報などの機密データが組織のネットワーク外部に保存されるケースも増えています。
このように、従来のように組織の内側と外側を明確に区別することが難しくなり、「内側=安全、外側=危険」という境界型セキュリティモデルの前提は崩れつつあります。そのため、従来の境界防護のみに依存するのではなく、新たなセキュリティ対策が必要となっています。
項目 | 内容 |
---|---|
従来のセキュリティ対策 | – 組織のネットワーク境界を固め、外部からの侵入を防ぐ「境界型セキュリティモデル」 – ファイアウォールなどのセキュリティ装置で不正アクセスを遮断 |
境界型セキュリティモデルの限界 | – サイバー攻撃の高度化:従来型のファイアウォールでは検知できない高度な攻撃が増加 – ビジネス環境の変化:リモートワークの普及による組織境界の曖昧化、クラウドサービス利用拡大による機密データの外部保存 |
今後のセキュリティ対策 | 従来の境界防護のみに依存しない新たな対策が必要 |
ゼロトラストモデルの登場
近年、企業活動におけるネットワークの活用が進み、場所や時間に縛られずに業務を行うことが当たり前になってきました。しかし、それと同時に、従来の社内ネットワークの境界を守るという考え方だけでは対処できない、新たな脅威が増大していることも事実です。
こうした状況に対応するため、「ゼロトラスト」という新しい情報管理の仕組みが注目されています。ゼロトラストとは、従来のように組織の内部だから安全と判断するのではなく、情報へのアクセス要求があった際に、それが社内からのアクセスであっても、必ず利用者や端末の正当性を確認し、許可された場合のみ情報へのアクセスを認めるという考え方です。
これまでの情報管理体制では、一度内部ネットワークに接続してしまえば、その後のアクセスは比較的自由にできてしまうケースが多く見られました。しかし、ゼロトラストでは、たとえ社内ネットワークに接続している端末からであっても、アクセスするたびに都度確認が行われるため、不正アクセスによる被害を最小限に抑えることが可能となります。
このように、ゼロトラストは、組織の内外や利用者、端末を問わず、あらゆるアクセスを信頼せず、常に確認を行うという厳格な情報管理体制です。このゼロトラストという考え方は、境界の曖昧化が進む現代のネットワーク環境において、より効果的な情報管理対策として期待されています。
従来の情報管理 | ゼロトラスト |
---|---|
組織の内部は安全と判断し、境界を守ることに重点を置く | アクセス要求があった際に、常に利用者や端末の正当性を確認する |
一度内部ネットワークに接続すれば、比較的自由にアクセス可能 | アクセスするたびに都度確認を行うため、不正アクセスによる被害を最小限に抑える |
ゼロトラストモデル導入のメリット
近年、企業活動における情報システムの重要性が高まり、機密情報や個人情報など、重要なデータへのアクセス保護がますます重要となっています。従来型のセキュリティ対策は、社内ネットワークと外部ネットワークの境界に防御壁を築き、外部からの不正アクセスを防ぐことに重点を置いていました。しかし、テレワークの普及やクラウドサービスの利用拡大に伴い、この境界が曖昧になりつつあり、従来の境界防御だけでは十分なセキュリティを確保することが困難になりつつあります。
このような背景から注目されているのが「ゼロトラストモデル」という新しいセキュリティの考え方です。ゼロトラストモデルとは、社内ネットワークと外部ネットワークの区別をなくし、すべてのアクセスに対して認証と認可を厳密に行うことで、信頼できないネットワークに接続されていることを前提としたセキュリティ対策です。
ゼロトラストモデルを導入することで、従来の境界防御では防ぎきれなかった、内部不正や、盗難端末からの情報漏えいなどのリスクを低減できます。例えば、従業員が不正にデータを持ち出そうとした場合でも、アクセス権限が適切に設定されていれば、そのアクセスをブロックし、情報漏えいを防ぐことができます。また、アクセス制御を厳格化することで、仮に不正アクセスが発生した場合でも、被害を最小限に抑えることが期待できます。さらに、アクセス状況を常に監視することで、早期に異常を検知し、迅速な対応が可能となります。これは、セキュリティ対策の高度化と効率化の両面を実現する上で非常に有効な手段と言えます。
項目 | 内容 |
---|---|
背景 | – 企業活動における情報システムの重要性が増大 – テレワークやクラウドサービスの普及により、従来の境界防御では不十分に |
ゼロトラストモデルとは | – 社内ネットワークと外部ネットワークの区別をなくす – 全てのアクセスに対して認証と認可を厳密に行う – 信頼できないネットワークに接続されていることを前提としたセキュリティ対策 |
メリット | – 内部不正や盗難端末からの情報漏えいリスクの低減 – 不正アクセス発生時の被害最小限化 – アクセス状況の監視による早期異常検知と迅速な対応 – セキュリティ対策の高度化と効率化 |
ゼロトラストモデル導入の注意点
近年、従来の境界防御型のセキュリティ対策では、巧妙化するサイバー攻撃を防ぎきれないケースが増加しており、新たな対策としてゼロトラストモデルが注目されています。ゼロトラストモデルとは、ネットワーク内部に信頼できる場所はないという前提に立ち、あらゆるアクセスに対して認証と認可を厳格に行うセキュリティモデルです。
しかし、ゼロトラストモデルを導入するためには、従来のセキュリティ対策からの転換が必要となるため、入念な準備と計画が欠かせません。まず、現状のセキュリティ対策を見直し、ネットワーク構成やシステムの洗い出しを行い、潜在的なリスクを明確にする必要があります。
その上で、どのシステムやデータをゼロトラストモデルで保護するのかを明確化し、段階的に導入を進めることが重要です。全てのシステムを一度にゼロトラストモデルに移行することは、現実的に困難な場合が多いため、優先順位を付けて段階的に導入していく計画を立てることが大切です。
また、ゼロトラストモデルでは、アクセス認証のたびに複雑な手順を踏む必要があるため、ユーザーの利便性が低下する可能性があります。そのため、セキュリティレベルを維持しながらも、ユーザーがストレスなく利用できるアクセス認証システムを導入することが重要となります。
さらに、ゼロトラストモデル導入には、従来のセキュリティ対策とは異なる知識や技術が必要となるため、担当者の教育や外部の専門家による支援も検討する必要があります。
概念 | 説明 |
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ゼロトラストモデルの定義 | ネットワーク内部に信頼できる場所はないという前提に立ち、あらゆるアクセスに対して認証と認可を厳格に行うセキュリティモデル。 |
導入の必要性 | 従来の境界防御型のセキュリティ対策では、巧妙化するサイバー攻撃を防ぎきれないケースが増加しているため。 |
導入のポイント | – 現状のセキュリティ対策の見直しと潜在的なリスクの明確化 – ゼロトラストモデル適用対象の明確化と段階的導入 – ユーザー利便性を考慮したアクセス認証システムの導入 – 担当者の教育や外部専門家による支援 |