ファイルに潜む影: 代替データストリームの脅威
セキュリティを高めたい
「代替データストリーム」ってなんですか?なんだか難しそうな言葉ですね。
情報セキュリティ専門家
そうですね。「代替データストリーム」は少し難しい概念ですが、Windowsのファイルシステムに関係するものです。簡単に言うと、ファイルの中に、隠された特別な領域を作れる機能のことです。
セキュリティを高めたい
隠された領域…? どういうことですか?
情報セキュリティ専門家
例えば、あなたが作った文書ファイルがあるとします。このファイルには、あなたが書いた文章が保存されていますよね。代替データストリームを使うと、このファイルに、見かけ上はわからない形で、別のデータもこっそり保存することができるんです。
代替データストリームとは。
「情報セキュリティでよく聞く『代替データストリーム』っていう言葉は、Windowsで使われているNTFSファイルシステムっていうものが持つ機能のことなんだ。これは、ファイルの中に、本来のデータとは別に、隠れたデータ領域を作れる機能で、ADSって略すこともあるよ。
普段私たちが使っているファイルやフォルダの情報は、NTFSっていう仕組みの中で、『マスターファイルテーブル』っていう場所に記録されているんだけど、この代替データストリームっていうのは、その記録とは別に、ファイル自身の中にこっそり作られる特別な領域なんだ。
悪いことを企む人は、この隠れた領域に、悪意のあるデータやプログラムをこっそり入れて、セキュリティソフトに見つからないようにすることがあるんだ。最近のウイルスや身代金要求型のウイルスなんかは、この代替データストリームを使って、悪さをするプログラムを隠したり、こっそり保管したりする手口をよく使うんだ。」
見えないファイル領域:代替データストリームとは
皆さんのパソコンの中にあるファイルは、名前や内容といった情報を持っています。Windowsパソコンをお使いの場合、ファイルシステムとしては「NTFS」が使われていることが多いでしょう。このNTFSには、「代替データストリーム(ADS)」と呼ばれる機能が備わっています。
ADSとは、ファイルに本来のデータとは別に、追加のデータを隠せる機能です。例えるなら、普段私たちが目にするファイルの姿とは別に、秘密のポケットが隠されているようなものです。このポケットには、ファイルの所有者や作成日時といった情報が保存されていることもありますが、実は、悪意のある第三者がこのADSを悪用し、こっそりとデータを隠す場合があります。
近年、このADSを悪用したサイバー攻撃が増加しています。攻撃者は、一見無害に見えるファイルに、ADSを使って悪意のあるプログラムを埋め込むのです。そして、そのファイルを開いた途端、パソコンがウイルスに感染してしまったり、重要な情報が盗み出されてしまう危険があります。
ADS自体は、Windowsの便利な機能の一つですが、このように悪用される可能性も秘めていることを知っておく必要があります。
項目 | 内容 |
---|---|
概要 | WindowsのファイルシステムNTFSの機能。ファイルに本来のデータとは別に追加のデータを隠すことができる。 |
例え | ファイルに秘密のポケットがあり、追加情報を隠せるイメージ。 |
リスク | 悪意のある第三者がADSを悪用し、悪意のあるプログラムを埋め込む可能性がある。 |
危険性 | ADSを悪用したファイルを開くと、ウイルス感染や情報漏洩の危険がある。 |
正規ファイルに便乗した攻撃手法
コンピューターウイルス対策ソフトは、日々進化するサイバー攻撃から守るため、ファイルの中身や挙動をチェックして、ウイルスなどを検知します。しかし、攻撃者は、より巧妙な方法でウイルス対策ソフトのチェックをくぐり抜けようと試みます。その手口の一つとして、正規のファイルに悪意のあるデータやプログラムを隠す攻撃があります。これは、あたかも正規のファイルに相乗りする形で、ウイルスを送り込むようなものです。
例えば、画像ファイルだとします。私たちは普段、何気なく画像ファイルを開きますが、悪意のある者は、この画像ファイルに見えるファイルの中に、実際にはウイルスを仕込んでいることがあります。このようなファイルは、一見、無害な画像ファイルとして認識されるため、ウイルス対策ソフトのチェックをすり抜けてしまう可能性があります。そして、利用者がそのファイルを開いてしまうと、ウイルス感染を引き起こす危険性があります。
このように、正規のファイルに悪意のあるデータやプログラムを隠す攻撃は、非常に巧妙であり、ウイルス対策ソフトによる検知を困難にする場合があります。そのため、利用者は、ファイルの入手元や内容を十分に確認するなど、自身でもセキュリティ対策を講じる必要があります。
ウイルス対策ソフトの機能 | 攻撃者の手口 | 具体的な例 | 対策 |
---|---|---|---|
ファイルの中身や挙動をチェックして、ウイルスなどを検知する。 | 正規のファイルに悪意のあるデータやプログラムを隠す。 | 画像ファイルにウイルスを仕込む。 | ファイルの入手元や内容を十分に確認する。 |
ランサムウェアやAPT攻撃にも悪用されるADS
近年、企業や組織にとって大きな脅威となっているのが、金銭を目的としたランサムウェアや、国家などの支援を受けた高度なサイバー攻撃(APT攻撃)です。これらの攻撃において、本来は便利な機能であるはずのADS(Alternate Data Stream代替データストリーム)が悪用されているケースが増えてきています。
ランサムウェアは、感染したコンピュータ内のファイルを暗号化し、その復号と引き換えに身代金を要求する攻撃です。攻撃者は、ADSに暗号化ツールや盗み出した重要な情報を隠すことで、セキュリティソフトによる検知を逃れようとしたり、自らの痕跡を消そうとしたりします。
また、APT攻撃は、長期にわたって標的の組織に潜伏し、機密情報を盗み出すことを目的とするケースが多く見られます。攻撃者は、ADSを隠れ蓑にすることで、長期間にわたりシステム内部に潜み、情報を盗み続けることが可能になります。
このように、ADSはサイバー攻撃の手口をより巧妙化させるために悪用される可能性があります。セキュリティ対策としては、ADSを悪用した攻撃の存在を認識し、ADSの内容を検知できるセキュリティソフトの導入や、従業員へのセキュリティ教育の実施などが重要となります。
攻撃の種類 | 目的 | ADSの悪用方法 | 対策 |
---|---|---|---|
ランサムウェア | 金銭の要求 | 暗号化ツールや盗み出した情報を隠す |
|
APT攻撃 | 機密情報の窃取 | システム内部への潜伏、情報窃取の長期化 |
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見えない脅威からパソコンを守るために
近年、巧妙化するサイバー攻撃の増加に伴い、目に見えない脅威からパソコンを守るための対策が重要性を増しています。その中でも、ADS(代替データストリーム)が悪用された攻撃は、発見が極めて困難であることから、大きな脅威となっています。
ADSとは、Windowsのファイルシステムに備わっている機能の一つで、ファイルに本来のデータとは別のデータを隠蔽する目的で利用されます。悪意のある者がADSを悪用した場合、ユーザーは自身のファイルに何が隠されているかを認識することができず、セキュリティソフトによる検知も困難なケースがあります。
このような、ADSを用いた攻撃からパソコンを守るためには、まず、OSやセキュリティソフトを常に最新の状態に保ち、セキュリティパッチを適用することが重要です。また、不審なファイルは開かない、信頼できないウェブサイトにはアクセスしないなど、基本的なセキュリティ対策を徹底することも重要です。
さらに、ファイルのアクセスログを監視することで、ADSへの不正なアクセスを検知できる可能性があります。アクセスログを定期的に確認し、身に覚えのないアクセスがないかを確認することで、早期発見、被害拡大の防止に繋げることが期待できます。
目に見えない脅威からパソコンを守るためには、日頃からのセキュリティ対策の意識が重要です。
脅威 | 対策 |
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ADS(代替データストリーム)を悪用した攻撃 – ファイルに本来と異なるデータを隠蔽 – ユーザーが気づきにくい – セキュリティソフトによる検知も困難 |
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