ソフトウェアサプライチェーン攻撃の理解に役立つOSC&Rとは

ソフトウェアサプライチェーン攻撃の理解に役立つOSC&Rとは

セキュリティを高めたい

「情報セキュリティに関連する用語『OSC&R』って、何ですか?難しそうな言葉なので、簡単に説明してもらえますか?」

情報セキュリティ専門家

「OSC&R」は、ソフトウェアを作る過程を狙った攻撃から守るための、いわば地図みたいなものだよ。ソフトウェアを作るには、色々な道具や材料を使うよね?その道具や材料をまとめて管理する仕組みを参考に、攻撃のパターンを分かりやすく整理してくれているんだ。

セキュリティを高めたい

なるほど。ソフトウェアを作る過程で、どんな攻撃が来るのかが分かる地図なんですね。でも、なんでそんな地図が必要なんですか?

情報セキュリティ専門家

最近、ソフトウェアを作る過程を狙った攻撃が増えているんだ。この地図があれば、どこでどんな攻撃が来るかが分かるから、事前に対策を立てたり、攻撃されたときに早く対応したりできるんだよ。

OSC&Rとは。

「情報セキュリティの分野で使われる『OSC&R』って何かしら?」と思われたかもしれませんね。これは、ソフトウェアを作る過程を狙った攻撃のやり方や動き方を分かりやすくまとめた、誰でも見られる一覧表のようなものです。有名なMITRE ATT&CKというものを参考に作られています。

この一覧表は、OXSecurityというセキュリティ会社が中心となって、名だたる会社の約20社が集まって作られました。ソフトウェア作りは、プログラムを書くだけじゃなく、色々な部品や道具を使う複雑な工程を含みますが、OSC&Rは、まさにそういったソフトウェア作りの全体を狙った攻撃が増えている現状を踏まえて作られたんです。

OSC&Rは、ソフトウェア作りを狙う攻撃者の行動を、誰が見ても分かるように、そして、実際にどう対策すれば良いのかが分かるように作られています。この一覧表が広まることで、攻撃者のやり口に対する共通認識が生まれ、セキュリティ対策や、あえて攻撃を仕掛けてみる訓練の質が向上することが期待されています。

OSC&Rでは、PBOM(Pipeline Bill of Materials)という、ソフトウェアの設計図のような考え方に基づいて、攻撃者の行動を、ソフトウェア作りの工程に沿って分類しています。PBOMは、オープンソースの安全性やCI/CD、コンテナといった、開発環境に応じた具体的な攻撃手法を分かりやすくまとめています。OSC&Rは、2023年3月からGitHubというサイトで公開されています。

ソフトウェアサプライチェーン攻撃の増加とOSC&Rの登場

ソフトウェアサプライチェーン攻撃の増加とOSC&Rの登場

昨今、ソフトウェア開発におけるサプライチェーンを標的にした攻撃が増加しています。これは、ソフトウェア開発が複雑化し、外部のライブラリやツールへの依存度が高まっていることが背景にあります。攻撃者は、この複雑な依存関係につけ込み、開発段階からソフトウェアに悪意のあるコードを埋め込んだり、潜んでいる脆弱性を悪用したりするようになりました。こうした攻撃は、発見が難しく、ひとたび被害が発生すると甚大な影響を及ぼす可能性があります。そこで、ソフトウェアサプライチェーン攻撃に対抗するため、新たな対策の枠組みとしてOSC&Rが登場しました。OSC&Rは、MITRE ATT&CKを参考に、攻撃者の戦術、技術、手順(TTP)を体系化したフレームワークです。

OSC&Rは、ソフトウェアサプライチェーン攻撃を深く理解し、効果的な対策を講じるために重要な役割を担います。具体的には、攻撃者がどのような方法でサプライチェーンに侵入し、悪意のあるコードを埋め込むのか、あるいは脆弱性を悪用するのかといった具体的な手順を体系的に示しています。このため、組織はOSC&Rを参照することで、自社のソフトウェア開発プロセスにおける弱点やリスクを把握し、適切なセキュリティ対策を講じることが可能になります。また、OSC&Rはセキュリティ人材の育成にも役立ちます。体系化された情報提供により、セキュリティ担当者はサプライチェーン攻撃に関する知識を深め、より効果的な防御体制を構築することができます。

項目 内容
背景 – ソフトウェア開発の複雑化
– 外部ライブラリやツールへの依存度増加
攻撃の特徴 – 開発段階からの悪意のあるコード埋め込み
– 潜む脆弱性の悪用
– 発覚の困難さ
– 被害発生時の影響の甚大さ
対策 – OSC&Rの導入
OSC&Rとは – ソフトウェアサプライチェーン攻撃に対応する新たな対策の枠組み
– MITRE ATT&CKを参考に、攻撃者のTTPを体系化
OSC&Rの役割 – ソフトウェアサプライチェーン攻撃の理解
– 効果的な対策の促進
– 組織の弱点・リスク把握の支援
– セキュリティ人材育成
OSC&Rのメリット – 攻撃手法の体系的理解
– 弱点とリスクの明確化
– 効果的なセキュリティ対策の実施
– セキュリティ担当者の知識向上

OSC&Rの概要:オープンソースの攻撃参照フレームワーク

OSC&Rの概要:オープンソースの攻撃参照フレームワーク

近年、ソフトウェア開発において外部のプログラムや部品を利用する機会が増加しており、それに伴い、開発段階から運用に至るまでの一連の流れ(サプライチェーン)全体におけるセキュリティ対策の重要性が高まっています。しかし、サプライチェーンは複雑な構造を持つため、どこにどのような脅威が存在するのかを把握することが難しく、効果的な対策が困難となっています。

このような背景から、セキュリティ対策を専門とする企業OXSecurityを中心とした20社を超える大手企業グループは、「OSC&R(オープンソース・サプライチェーン攻撃参照)」と呼ばれる、ソフトウェアサプライチェーンにおける攻撃者の行動パターンをまとめた情報を公開しました。

OSC&Rは、ソフトウェア開発のあらゆる段階を網羅しており、オープンソースソフトウェアや開発に使用するツール、ライブラリなどが含まれます。このフレームワークは、近年増加傾向にあるサプライチェーンへの攻撃を分かりやすく解説し、企業が自社のサプライチェーンの脆弱性を把握し、適切なセキュリティ対策を講じるための指針となることを目的としています。

OSC&Rは、企業がサプライチェーンのセキュリティ対策を強化する上で非常に有用な情報源となります。このフレームワークを活用することで、企業は潜在的な脅威を特定し、リスクを軽減するための対策を講じることができます。

項目 内容
背景 – ソフトウェア開発における外部プログラム・部品利用の増加
– サプライチェーン全体におけるセキュリティ対策の重要性増加
– サプライチェーンの複雑さ故、脅威の把握と効果的な対策が困難
OSC&Rとは – ソフトウェアサプライチェーンにおける攻撃者の行動パターンをまとめた情報
– セキュリティ対策専門企業OXSecurityを中心とした20社以上の大手企業グループにより公開
– ソフトウェア開発のあらゆる段階(オープンソースソフトウェア、開発ツール、ライブラリなど)を網羅
目的 – サプライチェーンへの攻撃の解説
– 企業によるサプライチェーンの脆弱性把握と適切なセキュリティ対策の支援
効果 – 企業のサプライチェーンセキュリティ対策強化のための情報源
– 潜在的な脅威の特定とリスク軽減対策への活用

OSC&Rの目的:攻撃の理解と対策の強化

OSC&Rの目的:攻撃の理解と対策の強化

– 攻撃を深く知り、防御を固める OSC&Rの目指すもの近年、ソフトウェアサプライチェーンを標的とした攻撃が深刻化しています。複雑化する攻撃の手口を正確に把握し、効果的な対策を講じるためには、攻撃者に関する共通認識を持つことが重要です。そこで、攻撃者の行動を体系的に記述し、具体的な対策に結びつけるためのフレームワーク「OSC&R(オースカー)」が登場しました。OSC&Rは、攻撃者がソフトウェアサプライチェーンのどの段階を狙うのか、どのような方法で侵入を試みるのか、そして最終的にどのような目的を達成しようとするのかを詳細に分析し、類型化しています。これは、セキュリティ対策を考える上で重要な情報を提供します。OSC&Rの普及により、開発者からセキュリティ担当者、経営層までが、攻撃者の行動パターンを共通の言葉で理解できるようになります。これは、組織全体でセキュリティ意識を高め、より的確な対策を立案することに繋がります。例えば、開発者はOSC&Rを参考に、脆弱性を作り込まないための対策を強化したり、セキュリティ担当者は、攻撃者が侵入経路として悪用しやすい箇所を特定し、重点的に監視体制を強化したりすることが可能になります。さらに、OSC&Rはレッドチーム演習など、実践的な訓練にも役立ちます。攻撃者の行動パターンを模倣したシナリオを作成することで、より現実的な訓練環境を構築し、組織のセキュリティ体制を強化することができます。OSC&Rは、進化し続けるサイバー攻撃からソフトウェアサプライチェーンを守るための、強力な武器となることが期待されています。

項目 内容
背景 ソフトウェアサプライチェーン攻撃の深刻化、攻撃者に関する共通認識の必要性
OSC&Rの定義 攻撃者の行動を体系的に記述し、具体的な対策に結びつけるためのフレームワーク
OSC&Rの特徴 攻撃者の行動を分析し類型化、セキュリティ対策に必要な情報を提供
OSC&Rのメリット
  • 組織全体でセキュリティ意識の向上
  • 的確な対策の立案
  • 開発者による脆弱性対策の強化
  • セキュリティ担当者による重点監視体制の強化
  • 実践的な訓練(レッドチーム演習など)への活用
OSC&Rの将来性 進化するサイバー攻撃からソフトウェアサプライチェーンを守るための強力な武器

PBOM:攻撃者のキルチェーンを開発ライフサイクルにマッピング

PBOM:攻撃者のキルチェーンを開発ライフサイクルにマッピング

近年の開発環境は、従来型のウォーターフォール型からアジャイル開発やDevOpsといった、より迅速かつ柔軟な開発体制へと変化を遂げています。
このような開発体制の変化に伴い、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)におけるセキュリティ対策も、新たな課題に直面しています。

従来のセキュリティ対策は、開発の最終段階で実施されることが多く、開発サイクルの早い段階で脆弱性を発見することが困難でした。
その結果、修正が遅れ、リリースの遅延やセキュリティリスクの増加につながる可能性がありました。

この問題に対処するために、開発の早い段階からセキュリティ対策を組み込む「シフトレフト」という考え方が広まっています
シフトレフトを実現するための一つの手法として、攻撃者の行動を開発ライフサイクルにマッピングする「PBOM(Pipeline Bill of Materials)」という概念が登場しました。

PBOMは、ソフトウェア部品表であるSBOM(Software Bill of Materials)の考え方を応用したもので、攻撃者がソフトウェア開発の各段階において、どのような攻撃手法を用いるかを可視化します。
具体的には、オープンソースソフトウェアの脆弱性、継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)パイプラインへの攻撃、コンテナ環境の脆弱性など、具体的な攻撃手法を開発ライフサイクルに沿って整理し、提示します。

PBOMを用いることで、開発者は自社の開発環境における潜在的なセキュリティリスクを把握し、適切な対策を講じることが可能となります。
また、セキュリティ担当者は、攻撃者の行動を予測し、より効果的なセキュリティ対策を立てることができます。
PBOMは、開発者とセキュリティ担当者の連携を強化し、よりセキュアなソフトウェア開発を実現するための強力なツールと言えるでしょう。

従来の開発体制 近年の開発体制 セキュリティ対策の課題
ウォーターフォール型 アジャイル開発、DevOps 開発サイクルの早い段階で脆弱性を発見することが困難
対策 説明 メリット
シフトレフト 開発の早い段階からセキュリティ対策を組み込む リリースの遅延やセキュリティリスクの増加を抑止
PBOM(Pipeline Bill of Materials) 攻撃者の行動を開発ライフサイクルにマッピングする
– オープンソースソフトウェアの脆弱性
– CI/CDパイプラインへの攻撃
– コンテナ環境の脆弱性
– 開発者は潜在的なセキュリティリスクを把握
– セキュリティ担当者は攻撃者の行動を予測し、効果的な対策が可能

OSC&Rの構成要素と活用方法

OSC&Rの構成要素と活用方法

– OSC&Rの構成要素と活用方法OSC&R(オースカー)は、ソフトウェアサプライチェーン攻撃に関する詳細な情報をまとめたフレームワークです。攻撃者がソフトウェア開発のどの段階を、どのような方法で攻撃するのかを具体的に示すことで、組織のセキュリティ対策を支援します。OSC&Rは、大きく分けて「戦術」「技術」「手順」「例」「緩和策」の5つの構成要素から成り立っています。* –戦術– 攻撃者が最終的に達成しようとする目標を指します。例えば、悪意のあるコードの埋め込みや、機密情報の窃取などが挙げられます。* –技術– 目標を達成するために用いられる具体的な方法や手段を指します。例えば、脆弱性の悪用や、ソーシャルエンジニアリングなどが挙げられます。* –手順– 攻撃を段階的に実行するための手順を詳細に示します。具体的なコマンドやツールの使用方法などが記述されています。* –– 過去の攻撃事例を交えながら、具体的な攻撃のイメージを掴みやすくしています。* –緩和策– 組織が攻撃から身を守るために取るべき対策を具体的に提示します。セキュリティ担当者は、OSC&Rを参考にすることで、自社のソフトウェア開発におけるリスクを洗い出し、適切な対策を講じることができます。例えば、OSC&Rで示された攻撃手順を参考に、自社のセキュリティ対策が十分であるかを検証したり、不足している対策を強化したりすることができます。さらに、OSC&Rは、より実践的なセキュリティ対策にも役立ちます。例えば、レッドチーム演習のシナリオ作成にOSC&Rの攻撃パターンを参考にすれば、より現実的な攻撃を想定した演習を実施することができます。また、OSC&Rで示された攻撃手法を検知するセキュリティツールの開発にも活用できます。このように、OSC&Rは、ソフトウェアサプライチェーン攻撃から組織を守るための強力な武器となります。セキュリティ担当者は、OSC&Rを積極的に活用し、自社のセキュリティ対策を強化していくことが重要です。

構成要素 説明
戦術 攻撃者が最終的に達成しようとする目標 (例: 悪意のあるコードの埋め込み、機密情報の窃取)
技術 目標達成のために用いられる具体的な方法や手段 (例: 脆弱性の悪用、ソーシャルエンジニアリング)
手順 攻撃を段階的に実行するための詳細な手順 (例: コマンドやツールの使用方法)
過去の攻撃事例を用い、具体的な攻撃のイメージをわかりやすく提示
緩和策 組織が攻撃から身を守るために取るべき具体的な対策

OSC&Rの公開と今後の展望

OSC&Rの公開と今後の展望

– OSC&Rの公開と今後の展望OSC&Rは、2023年3月からGitHub上で公開され、誰でも自由に利用できるようになりました。これは、ソフトウェアサプライチェーンのセキュリティ対策に頭を悩ませる多くの組織にとって、非常に朗報と言えるでしょう。

OSC&Rは、ソフトウェアサプライチェーンにおける様々なリスクに対応するための包括的なフレームワークを提供します。このフレームワークは、ソフトウェア開発の各段階において、具体的な対策を講じるための指針を示すと共に、組織内での役割分担や責任範囲を明確化することで、より効果的なセキュリティ対策の実施を支援します。

今後、OSC&Rは、コミュニティからのフィードバックを積極的に取り入れながら、機能の追加や改善を進めていく予定です。特に、最新の攻撃手法への対応や、様々な開発ツールとの連携強化などが、今後の開発の重点となるでしょう。

ソフトウェアサプライチェーンを狙った攻撃は、年々増加の一途をたどっており、その手口も巧妙化しています。OSC&Rのようなフレームワークを活用し、常に最新の脅威情報や対策方法を習得しておくことが、安全なソフトウェア開発には不可欠と言えるでしょう。

項目 内容
概要 – OSC&Rが2023年3月からGitHub上で公開
– ソフトウェアサプライチェーンのセキュリティ対策を支援する包括的なフレームワーク
特徴 – ソフトウェア開発の各段階における具体的な対策指針
– 組織内での役割分担や責任範囲の明確化
今後の展望 – コミュニティからのフィードバックによる機能追加・改善
– 最新の攻撃手法への対応
– 様々な開発ツールとの連携強化
重要性 – ソフトウェアサプライチェーン攻撃の増加と巧妙化
– OSC&Rのようなフレームワーク活用と最新情報習得の必要性