アプリケーションのセキュリティ対策:DASTとは?

アプリケーションのセキュリティ対策:DASTとは?

セキュリティを高めたい

先生、「動的アプリケーションセキュリティテスト」って、どんなものですか?

情報セキュリティ専門家

いい質問だね。「動的アプリケーションセキュリティテスト」は、実際にアプリを動かしてみて、欠陥を探すんだよ。例えるなら、泥棒が家に入れないか確かめるために、実際にドアや窓を叩いてみるようなものかな。

セキュリティを高めたい

実際にアプリを動かすんですね!アプリを動かさずに調べる方法もあるんですか?

情報セキュリティ専門家

その通り!アプリを動かさずに調べる方法を「静的アプリケーションセキュリティテスト」と言うんだ。こちらは、家の設計図を見て、泥棒が入り込みそうな場所を探すようなものだね。

動的アプリケーションセキュリティテストとは。

「動的アプリケーションセキュリティテスト」は、アプリケーションを実際に動かした状態で、弱点がないか調べるためのテスト方法です。ソフトウェア開発の現場で使われていて、「動的アプリケーションセキュリティテスト」の英語表記を略して「DAST」と呼ばれることもあります。

はじめに

はじめに

– はじめに昨今、インターネットの普及に伴い、Webアプリケーションやモバイルアプリケーションなど、ソフトウェアは私たちの生活に欠かせないものとなっています。このような状況下、ソフトウェアの開発現場では、利便性や機能性だけでなく、悪意のある攻撃者からシステムや利用者の情報資産を守るためのセキュリティ対策がますます重要になっています。セキュリティ対策には、システム開発後に行うものもありますが、開発段階から脆弱性を作り込まない対策も重要です。開発段階におけるセキュリティ対策の一つに、「動的アプリケーションセキュリティテスト(DAST)」があります。DASTは、完成に近い状態のアプリケーションに対して疑似的な攻撃を実施し、脆弱性の有無を検査する手法です。従来のセキュリティ対策では、開発の終盤やリリース後にセキュリティ専門家による検査が行われることが多かったのですが、開発段階でDASTを実施することで、早期に脆弱性を発見し、修正することが可能となります。これにより、開発コストの削減や、より安全なソフトウェアの提供に繋がります。今回は、DASTの概要や実施するメリット、具体的な手法などについて詳しく解説していきます。

DASTとは メリット
完成に近い状態のアプリケーションに対して疑似的な攻撃を実施し、脆弱性の有無を検査する手法 開発段階で脆弱性を発見・修正が可能になるため、開発コストの削減、より安全なソフトウェアの提供に繋がる

動的アプリケーションセキュリティテスト(DAST)の概要

動的アプリケーションセキュリティテスト(DAST)の概要

– 動的な視線で守りを固める動作環境での脆弱性検査とは

情報システムの安全性を確保するための取り組みとして、システム開発の最終段階で行われるテストがあります。その中でも、実際にシステムを動かした状態で、あたかも悪意のある第三者が攻撃を仕掛けてきたかのように動作を模倣し、セキュリティ上の弱点を見つけ出す手法を「動的アプリケーションセキュリティテスト」、略して「DAST」と呼びます。

DASTは、システム開発の比較的後の段階、具体的にはテスト専用の環境や本番環境に近い形で構築されたステージング環境にシステムが配備された後に行われることが多いです。

このテストの特徴は、机上の分析にとどまらず、実際にシステムを稼働させた状態で検査を行う点にあります。これにより、開発中の想定とは異なる動作や、外部環境との連携による予期せぬ脆弱性を発見できる可能性が高まります。

例えるなら、DASTはシステムという建物を実際に使いながら、窓やドアの強度を試したり、壁に穴がないか探したりするようなものです。完成予想図を基にしたチェックだけでは見逃してしまうような、現実世界での利用を想定した実践的なセキュリティ対策と言えるでしょう。

項目 内容
名称 動的アプリケーションセキュリティテスト(DAST)
目的 情報システムの安全性を確保するため、実際にシステムを動かした状態で脆弱性を発見する。
実施時期 システム開発の後期段階(テスト専用環境やステージング環境)
特徴 – 実際にシステムを稼働させた状態で検査を行う。
– 開発中の想定とは異なる動作や、外部環境との連携による予期せぬ脆弱性の発見が可能。
例え システムという建物を実際に使いながら、窓やドアの強度を試したり、壁に穴がないか探したりするようなもの。

DASTで検出できる脆弱性

DASTで検出できる脆弱性

動的アプリケーションセキュリティテスト(DAST)は、稼働中のWebアプリケーションに擬似的な攻撃を実施し、その応答を分析することによって脆弱性を検出します。DASTは、OWASP Top 10に挙げられるような、Webアプリケーションに共通してみられる脆弱性の検出に特に有効です。

DASTによって検出可能な代表的な脆弱性としては、クロスサイトスクリプティング(XSS)、SQLインジェクション、コマンドインジェクションなどが挙げられます。

クロスサイトスクリプティング(XSS)は、攻撃者がWebページに悪意のあるスクリプトを埋め込み、閲覧者を騙して個人情報などを盗み出す攻撃です。DASTは、Webアプリケーションに入力値を送信し、その応答に含まれるスクリプトを解析することで、XSSの脆弱性を検出します。

SQLインジェクションは、攻撃者がWebアプリケーションに悪意のあるSQL文を注入し、データベースを不正に操作する攻撃です。DASTは、WebアプリケーションにSQL文になり得る入力値を送信し、データベースエラーなどの異常な応答を検知することで、SQLインジェクションの脆弱性を検出します。

コマンドインジェクションは、攻撃者がWebアプリケーションに悪意のあるコマンドを注入し、サーバ上で不正な操作を実行する攻撃です。DASTは、Webアプリケーションにコマンドになり得る入力値を送信し、サーバからの応答を監視することで、コマンドインジェクションの脆弱性を検出します。

これらの脆弱性を悪用されると、個人情報や機密情報の漏洩、データの改ざん、サービスの妨害といった深刻な被害が発生する可能性があります。DASTは、これらの脆弱性を開発の早い段階で発見し、修正を促すことで、安全なWebアプリケーションの開発に貢献します。

脆弱性 説明 DASTによる検出方法
クロスサイトスクリプティング(XSS) 攻撃者がWebページに悪意のあるスクリプトを埋め込み、閲覧者を騙して個人情報などを盗み出す攻撃 Webアプリケーションに入力値を送信し、その応答に含まれるスクリプトを解析する
SQLインジェクション 攻撃者がWebアプリケーションに悪意のあるSQL文を注入し、データベースを不正に操作する攻撃 WebアプリケーションにSQL文になり得る入力値を送信し、データベースエラーなどの異常な応答を検知する
コマンドインジェクション 攻撃者がWebアプリケーションに悪意のあるコマンドを注入し、サーバ上で不正な操作を実行する攻撃 Webアプリケーションにコマンドになり得る入力値を送信し、サーバからの応答を監視する

DASTのメリット

DASTのメリット

– DASTのメリットDAST(動的アプリケーションセキュリティテスト)は、実際に稼働しているアプリケーションに対して疑似攻撃を行い、脆弱性を検出するセキュリティテストの手法です。従来のソースコード診断とは異なり、アプリケーションの実行環境でテストを行うため、より実践的なセキュリティ対策に役立ちます。DASTの大きなメリットの一つとして、実際の攻撃を模倣したテストを実施できる点が挙げられます。攻撃者が実際に行うような手法を用いてテストを行うことで、より現実的な攻撃シナリオを想定した脆弱性診断が可能になります。これにより、より効果的なセキュリティ対策を講じることが期待できます。また、DASTは、アプリケーションのソースコードにアクセスすることなくテストを実施できる点も大きなメリットです。そのため、開発言語やフレームワークに依存せず、様々なアプリケーションに対して適用できます。これは、開発環境が多様化する現代において、非常に重要な利点と言えるでしょう。さらに、DASTは自動化ツールを使用することで、効率的にテストを実施することが可能です。自動化ツールを用いることで、テスト作業の負担を軽減し、より多くのテストケースを効率的に実行できます。これにより、限られた時間とリソースで、より網羅的なセキュリティテストを実現することが可能になります。DASTは、これらのメリットから、近年注目を集めているセキュリティテスト手法の一つです。実践的な攻撃シナリオに基づいた脆弱性診断や、開発環境に依存しない柔軟性、そして自動化による効率化といった利点を活かすことで、より安全なアプリケーション開発に貢献することが期待されます。

メリット 説明
実践的な攻撃シナリオ 実際の攻撃を模倣したテストを実施できるため、より現実的な攻撃シナリオを想定した脆弱性診断が可能。
ソースコードへのアクセス不要 アプリケーションのソースコードにアクセスすることなくテストを実施できるため、開発言語やフレームワークに依存せず、様々なアプリケーションに適用可能。
効率的なテスト実施 自動化ツールを使用することで、テスト作業の負担を軽減し、より多くのテストケースを効率的に実行可能。

DASTのデメリット

DASTのデメリット

– DASTのデメリットDASTは強力なセキュリティテストツールですが、いくつかの欠点も抱えています。まず、テストの実行に時間がかかる点が挙げられます。DASTはアプリケーション全体を外部からスキャンするため、広範囲にわたる検査が必要となり、完了までに時間がかかってしまうのです。場合によっては、テストの実行に数日かかることもあり、開発のスピード感が求められる現代の開発サイクルにおいては、これが大きな足かせとなる可能性も否定できません。また、DASTは万能ではなく、すべての脆弱性を発見できるわけではありません。特に、アプリケーションの内部構造やデータフローに依存する脆弱性や、ビジネスロジックの不備に起因する脆弱性を見つけることは苦手です。あくまでも、外部から見える範囲で攻撃を仕掛けてみて、その反応から脆弱性を推測する手法であるため、隠れた欠陥を見つけることは難しいと言えるでしょう。さらに、DASTを効果的に運用するには、セキュリティに関する専門的な知識やスキルが必要となる場合もあります。ツールの選定や設定、テスト結果の解析、適切な対策の実施など、それぞれの段階において専門家の知見が求められるケースも少なくありません。そのため、DASTの導入は、単にツールを導入するだけでなく、セキュリティ人材の育成や体制作りも同時に検討する必要があると言えるでしょう。

項目 内容
テスト時間 長い。アプリケーション全体をスキャンするため時間がかかる場合があり、数日かかることもある。
脆弱性の検知範囲 限定的。アプリケーション外部からのスキャンであるため、内部構造やデータフローに依存する脆弱性やビジネスロジックの不備による脆弱性は検知が困難。
運用に必要なスキル 専門知識やスキルが必要。ツールの選定、設定、結果解析、対策実施など専門家の知見が求められる。

まとめ

まとめ

今回は、開発中のアプリケーションの安全性を確保するために重要な役割を果たす「DAST」について説明しました。

DASTは、アプリケーションを実際に動作させながら攻撃を模倣することで、セキュリティ上の弱点を見つけ出す手法です。開発の段階でこのテストを実施することで、問題点を早期に発見し、修正することができます。これは、より安全なアプリケーションを開発するために非常に有効な手段です。しかし、DASTだけでアプリケーションのセキュリティが完璧になるわけではありません。DASTは、あくまでセキュリティ対策の一部であり、他の対策と組み合わせることで、より強固なセキュリティ体制を構築することが重要です。

例えば、開発の初期段階からセキュリティを考慮した設計を行う「セキュリティバイデザイン」や、ソースコードを解析して脆弱性を検出する「SAST」などの手法も有効です。

DASTは、開発段階において重要な役割を果たしますが、他のセキュリティ対策と組み合わせることで、より効果的にアプリケーションの安全性を高めることができます。安全なアプリケーション開発のためには、DASTだけでなく、様々なセキュリティ対策を適切に組み合わせることが重要です。

項目 説明
DASTとは アプリケーションを実際に動作させながら攻撃を模倣することで、セキュリティ上の弱点を見つけ出す手法
メリット 開発段階で問題点を早期に発見・修正可能
注意点 DASTだけでは完璧なセキュリティ対策にはならない
他のセキュリティ対策と組み合わせる必要がある
他のセキュリティ対策例 セキュリティバイデザイン
SAST