PEiD:実行ファイルの正体を見破るツール
セキュリティを高めたい
「PEiD」って、情報セキュリティの分野でよく聞くんですけど、どんなものなんですか?
情報セキュリティ専門家
「PEiD」はね、プログラムに使われている道具みたいなものを調べるツールのことだよ。 例えば、みんなが毎日使っているパソコンのソフトにも、それぞれ作られた道具が使われているんだけど、「PEiD」を使うことで、そのソフトがどんな道具で作られたのかが分かるんだ。
セキュリティを高めたい
へえー、面白そう!どんな道具が使われているか分かるって、何だか探偵みたいですね!でも、なんでそれが情報セキュリティと関係があるんですか?
情報セキュリティ専門家
いいところに気がついたね!実は、悪意のあるプログラムを解析して、どんな作りになっているのかを調べることで、そのプログラムがどんな悪いことをするのかを突き止めたり、対策を考えたりすることができるんだ。だから「PEiD」は、情報セキュリティの分野でとても役に立つツールなんだよ。
PEiDとは。
「PEiD」っていう言葉は、情報セキュリティの分野で使われているんだけど、これは「PEiDentifier」とか「PackedExecutableiDentifier」っていう正式名称のソフトのことで、簡単に言うと、プログラムに隠された仕掛けを見つけるための道具なんだ。どんな仕掛けを見つけるかっていうと、プログラムを小さくしたり、解析しにくくしたりする仕組みのことね。このソフトを使うと、プログラムの表面をざっと調べて、どんな仕掛けが使われているかを知ることができる。例えば、「UPX」っていう有名な仕掛けとかも、このソフトを使えば見つけることができるんだ。仕組みの判別には、それぞれの仕掛け特有の「サイン」をもとに行われる。そのほかにも、ファイルの情報を見たり、プログラムの中身を直接覗いたりすることもできる、なかなか便利な道具なんだよ。
ファイル分析の強力な助っ人:PEiDとは
– ファイル分析の強力な助っ人PEiDとはPEiDは、正式名称をPEiDentifier(またはPackedExecutableiDentifier)という、WindowsのプログラムファイルであるPEファイルの分析に特化したツールです。 マルウェア解析やソフトウェア開発の現場で広く活用されています。PEiDの最大の特徴は、実行ファイルに、難読化を目的としたパッキングや、内容を隠す暗号化が施されているか、また、どのような開発環境(コンパイラ)で作成されたかを迅速に識別できる点にあります。例えば、悪意のあるプログラムを解析する場合、作成者がプログラムを分かりにくくするために、パッキングや暗号化を施していることがよくあります。PEiDを使えば、どのような技術が使われているかを瞬時に把握できるため、解析の糸口を見つけ出すことができます。また、ソフトウェア開発の現場では、プログラムの動作に問題が発生した場合、原因を突き止めるために、開発環境や使用されているライブラリなどを特定する必要があります。PEiDは、このような情報を効率的に取得するための便利なツールとして活用できます。このように、PEiDはセキュリティ専門家や開発者にとって、ファイルの正体を見破り、解析や開発を円滑に進めるための強力な武器と言えるでしょう。
機能 | 説明 | 活用例 |
---|---|---|
パッキング・暗号化技術の識別 | 実行ファイルに難読化のための パッキングや暗号化が 施されているかを識別 |
マルウェア解析時に、 解析の糸口を見つける |
開発環境の特定 | プログラムがどのような 開発環境(コンパイラ)で 作成されたかを識別 |
ソフトウェア開発時に、 プログラムの 動作問題の原因を 突き止める |
パッカーの検出:シグネチャベースの分析
悪意のあるプログラムを解析する際、そのプログラムに「梱包」と呼ばれる難読化技術が使われているかどうかを見抜くことは非常に重要です。この「梱包」を施すソフトウェアをパッカーと呼びますが、これを検出する方法の一つに、シグネチャベースの分析というものがあります。
シグネチャベースの分析では、PEiDのようなツールが使われます。PEiDは、UPXやASPackといった有名なパッカーから、あまり知られていないものまで、多種多様なパッカーを検出することができます。
その仕組みは、それぞれのパッカーが持つ特有のバイトパターンをデータベース化し、解析対象のプログラムファイルと照合するというものです。この特有のバイトパターンを「シグネチャ」と呼びます。PEiDは、このシグネチャを基に、高い精度でパッカーの種類を特定します。
このように、シグネチャベースの分析は、パッカーの検出において有効な手段の一つとなっています。しかし、未知のパッカーや、シグネチャを改変されたパッカーを検出することは困難です。そのため、他の分析手法と組み合わせて、より確実にパッカーを検出することが重要となります。
項目 | 内容 |
---|---|
手法 | シグネチャベースの分析 |
目的 | 悪意のあるプログラムに施された「梱包」(難読化技術)の検出 |
ツール例 | PEiD |
仕組み | パッカー特有のバイトパターン(シグネチャ)をデータベース化し、解析対象のプログラムファイルと照合 |
利点 | 高い精度でパッカーの種類を特定可能 |
欠点 | – 未知のパッカーや、シグネチャを改変されたパッカーの検出は困難 – 他の分析手法と組み合わせる必要あり |
コンパイラの特定:ファイルの起源を探る
– コンパイラの特定ファイルの起源を探る実行ファイルの解析において、-PEiD-は強力なツールです。このツールは、ファイルを圧縮したり難読化したりする「パッカー」と呼ばれるソフトウェアを検出するだけでなく、そのファイルを作成する際に使用されたコンパイラを特定することもできます。コンパイラとは、人間が理解しやすいプログラミング言語で書かれたプログラムを、コンピュータが実行できる形式に変換するソフトウェアです。PEiDは、-マイクロソフトのVisual StudioやボーランドのDelphi-といった、広く利用されている主要なコンパイラに対応しており、それぞれの特徴を分析することで、ファイルがどのコンパイラを使って作成されたのかを特定します。この情報から、ファイルの作成に使用された開発環境や、場合によっては作成時期に関する手がかりを得ることができます。これは、特にマルウェア解析において重要な意味を持ちます。マルウェアが作成された時期や使用された技術レベルを推測することで、攻撃者の技術力や活動時期、さらには攻撃の手口などを分析する手がかりとなります。このように、PEiDを用いたコンパイラの特定は、ファイルの起源を深く探る上で重要なプロセスであり、セキュリティ対策を強化する上で欠かせない要素と言えるでしょう。
ツール | 機能 | 対象 | 分析による情報 | 意義 |
---|---|---|---|---|
PEiD | – パッカーの検出 – コンパイラの特定 |
実行ファイル | – 使用されたコンパイラ – 開発環境 – 作成時期 |
– マルウェア解析(攻撃者の技術力, 活動時期, 攻撃の手口) – セキュリティ対策の強化 |
表層解析:ファイルの中身を覗き込む
– 表層解析ファイルの中身を覗き込む「表層解析」とは、ファイルを深く解析する前に、そのファイルが持つ基本的な情報を調べる作業のことです。これは、ファイルの種類や特徴を大まかに掴み、その後の解析方針を立てるために非常に重要です。表層解析では、ファイルの種類、サイズ、作成日時といった基本情報に加え、ファイルが実行ファイルの場合には、プログラムの開始位置を示す「エントリポイント」や、使用されているプログラミング言語、ライブラリなどの情報も調べます。これらの情報は、ファイルの動作や目的を推測する手がかりとなります。例えば、「PEiD」のようなツールを使うと、これらの情報を一覧で確認することができます。PEiDは、実行ファイルの表層解析を自動で行ってくれる便利なツールです。ファイルのハッシュ値を計算する機能も備えているため、マルウェア解析の初期段階でよく用いられます。表層解析は、ファイルの詳細な解析を行う前の準備段階として非常に重要です。ファイルの特徴を把握することで、より効率的かつ効果的に解析を進めることができます。
項目 | 説明 |
---|---|
表層解析の目的 | – ファイルを深く解析する前に、基本的な情報を調べる – ファイルの種類や特徴を大まかに掴み、その後の解析方針を立てる |
表層解析で調べる情報 | – ファイルの種類 – サイズ – 作成日時 – エントリポイント – プログラミング言語 – ライブラリ |
表層解析ツールの例 | – PEiD – (ハッシュ値計算機能も備えている) |
表層解析の重要性 | – ファイルの詳細な解析を行う前の準備段階 – ファイルの特徴を把握することで、より効率的かつ効果的に解析を進めることができる |
PEiDの限界:進化する脅威への対応
PEiDは、不正なプログラムが使っている暗号化や難読化の手法を解析する、頼りになる道具です。しかし、万能ではありません。日々進化を続けるサイバー攻撃の脅威に対して、PEiDだけで立ち向かうには限界があります。
まず、PEiDがその能力を発揮できない場合があります。それは、まだ知られていない全く新しいパッキング手法や、高度な技術で難読化された不正なプログラムの場合です。PEiDはそのようなプログラムを解析するデータベースを持っていないため、正体不明として扱わざるを得ません。
また、PEiDはあくまでもプログラムの表面だけを分析するツールであるという点も忘れてはいけません。プログラムの深い部分まで詳しく調べるためには、プログラムの動作を一つずつ追いかける「逆アセンブラ」や、プログラムの動きを一時的に止めて内部の状態を確認できる「デバッガ」といった、より専門的な道具が必要になります。
セキュリティ対策を万全にするためには、PEiDだけに頼るのではなく、複数のツールや手法を組み合わせて、多角的に分析することが重要です。PEiDはあくまでもセキュリティ対策の第一歩であり、その結果をうのみにせず、常に最新の脅威情報を入手し、対策を強化していく必要があります。