閉域網の落とし穴:本当に安全?

閉域網の落とし穴:本当に安全?

セキュリティを高めたい

先生、「閉域網」って、インターネットにつながってないネットワークのことですよね?なんだかすごく安全そうなイメージがあるんですけど、本当に安全なんですか?

情報セキュリティ専門家

いい質問ですね!確かに、閉域網はインターネットに直接接続されていないので、一見すると安全そうに見えるかもしれません。しかし、最近はリモートワークなどで、会社のネットワークと閉域網をつなぐケースが増えてきました。その接続部分が脆弱だと、そこから侵入されてしまう危険性もあるんです。

セキュリティを高めたい

なるほど。つまり、閉域網だからといって、完全に安心できるわけではないんですね…。

情報セキュリティ専門家

その通りです。閉域網はあくまでセキュリティ対策の一つに過ぎません。重要なのは、閉域網と他のネットワークの接続部分のセキュリティをしっかり確保すること、そして、常に最新のセキュリティ対策をしておくことが大切です。

閉域網とは。

「閉域網」という言葉は、情報セキュリティの分野で使われる専門用語です。これは、物理的にインターネットと繋がっていないネットワークや、特別な設定によってインターネットとの接続を制限しているネットワークのことを指します。

身近な例では、通信会社が顧客向けに提供している「IP-VPN」というサービスがあります。これは閉域網を使って安全な通信を実現しています。ほかにも、お金のやり取りを行うシステムや、国の安全を守るためのシステムなどでも、この閉域網が使われています。

しかし最近では、インターネット経由で遠くのコンピュータに接続したり、離れた場所にある機械の点検やソフトの更新を行うことが当たり前になってきました。そのため、完全に外部と遮断された閉域網を維持するには、今まで以上に費用や手間がかかるようになっています。

さらに、それぞれの部署や取引先が、管理担当者に知らせずに独自のネットワークやソフトを導入してしまうケースも増えています。このような、管理外のインターネット接続は「シャドーIT」とも呼ばれ、セキュリティ上の弱点となり、攻撃の入り口になる危険性もはらんでいます。

最近では、コンピュータウイルスの一種である「ランサムウェア」による被害が社会問題となっています。このような状況下において、一部の業界では当たり前のように「閉域網なら安全だ」と考えられていましたが、その考え方が本当に正しいのか、改めて議論されています。

関連用語としては、「エア・ギャップ」という言葉があります。これは、物理的にネットワークを分離することを指します。

閉域網とは

閉域網とは

– 閉域網とはインターネットのように世界中と繋がっているネットワークとは異なり、閉域網は特定のユーザーだけがアクセスできる限定的なネットワークのことを指します。 例えば、企業が社内でのみ使用することを目的としたネットワークを構築した場合、それは閉域網の一種となります。閉域網の最大の特徴は、外部からのアクセスを遮断することで、高いセキュリティレベルを維持できる点にあります。 企業が取り扱う重要な情報や顧客データなどを、インターネット経由の不正アクセスやサイバー攻撃から守るためには、この閉域網が有効な手段となります。閉域網は、まるで周囲から隔離された部屋のようなイメージです。許可された人だけが鍵を使って入室できるように、閉域網も特定の認証情報を持つユーザーだけがアクセスを許可されます。 このようにして、外部からの侵入を防ぎ、内部の情報を守る堅牢な仕組みを構築しています。近年、企業活動における情報管理の重要性が高まるにつれ、閉域網の必要性はますます高まっています。 機密情報や個人情報の漏洩は、企業にとって大きな損失をもたらすだけでなく、社会的な信用を失墜させることにも繋がります。 そのため、情報資産を安全に管理するための対策として、閉域網の導入がますます重要視されているのです。

項目 説明
閉域網とは 特定のユーザーだけがアクセスできる限定的なネットワーク
特徴 外部からのアクセスを遮断することで、高いセキュリティレベルを維持できる
メリット 企業が取り扱う重要な情報や顧客データなどを、インターネット経由の不正アクセスやサイバー攻撃から守る
アクセス方法 特定の認証情報を持つユーザーだけがアクセスを許可される
近年における重要性 情報資産を安全に管理するための対策として、閉域網の導入がますます重要視

閉域網の利用例

閉域網の利用例

閉域網は、外部からの不正アクセスを遮断し、限られた利用者のみがアクセス可能なネットワークです。高い安全性が求められる場面で幅広く活用されています。

例えば、銀行や証券会社など、金融機関の決済システムでは、顧客の重要な資産情報や取引情報を扱うため、強固なセキュリティ対策が必須です。そこで、閉域網を構築することで、外部からの攻撃や情報漏えいのリスクを大幅に低減し、安全な取引環境を実現しています。

また、政府や防衛機関の情報システムにおいても、国家機密や安全保障に関わる重要な情報を取り扱うため、閉域網が積極的に採用されています。これらの機関では、情報漏えいが国家的な損失に繋がる可能性があるため、最高レベルのセキュリティレベルを維持する必要があります。

企業においても、閉域網の活用は進んでいます。特に、研究開発部門では、企業の競争力を左右する重要な技術情報や設計情報などを扱うため、情報漏えい対策は非常に重要です。そのため、閉域網を構築し、アクセス権を持つ限られた関係者のみが情報にアクセスできる環境を整備しています。同様に、人事情報など、取り扱いに注意が必要な情報資産を保護するためにも、閉域網が有効です。

活用場面 目的
金融機関の決済システム 顧客の資産情報や取引情報を保護し、安全な取引環境を実現する
政府や防衛機関の情報システム 国家機密や安全保障に関わる重要情報を保護し、国家的な損失を防ぐ
企業の研究開発部門 企業の競争力を左右する技術情報や設計情報を保護する
人事情報など機密性の高い情報資産の管理 情報漏えいを防ぎ、適切な情報管理を行う

閉域網の限界

閉域網の限界

従来、企業の重要な情報資産を守る上で、閉域網は堅牢なセキュリティ対策として有効とされてきました。しかし、近年のIT技術の進化や働き方の変化は目まぐるしく、閉域網の有効性が揺らいでいるのも事実です。特に、近年急速に普及したテレワークは、この流れを加速させています。従業員が自宅や外出先から社内システムにアクセスするために、VPNなどのリモートアクセス手段が広く利用されるようになりました。これは、従来の閉域網の考え方である「外部からの接続を遮断する」という原則からすると、接続点が増加することを意味し、セキュリティリスクを高める要因となりえます。
また、従来のシステム構築では、自社でサーバやソフトウェアを保有することが一般的でしたが、近年では業務効率化やコスト削減の観点から、クラウドサービスの利用が拡大しています。この流れは、従来明確であった閉域網とインターネットの境界線を曖昧にする要因の一つと言えるでしょう。クラウドサービスはインターネットを経由して利用するため、閉域網の外部に機密情報が置かれる可能性があり、新たなセキュリティ対策が必要となるからです。
このように、閉域網は従来のように万能なセキュリティ対策とは言えなくなってきています。変化する状況に合わせて、柔軟で多層的なセキュリティ対策を講じることが、企業の重要な情報資産を守る上で、これまで以上に重要になっています。

従来のセキュリティ対策 近年の変化 セキュリティへの影響
閉域網による外部からの接続遮断 – テレワークの普及によるVPN接続の増加
– クラウドサービスの利用拡大
– 接続点の増加によるセキュリティリスクの増加
– 閉域網とインターネットの境界線曖昧化による新たなセキュリティ対策の必要性

シャドーITの問題

シャドーITの問題

– シャドーITの問題近年、企業活動において情報技術は欠かせないものとなり、多くの企業が業務効率化のために様々な情報システムを導入しています。それと同時に、情報システム部門の管理の目が行き届かないところで、従業員が個人的に業務にクラウドサービスなどを利用する「シャドーIT」が問題視されています。シャドーITは、従業員にとっては、業務の効率化や柔軟性の向上といったメリットをもたらします。しかし、企業全体で見ると、セキュリティリスクの高まりという大きな問題点を抱えています。例えば、企業は重要な情報を守るために、インターネットと切り離された閉域網を構築している場合があります。しかし、シャドーITによって、従業員が知らず知らずのうちに会社のネットワークと外部のクラウドサービスを接続してしまう可能性があります。これは、セキュリティの穴となり、悪意のある第三者に企業の機密情報にアクセスされる危険性も孕んでいます。さらに、シャドーITで利用されるサービスは、企業のセキュリティ基準を満たしていない場合もあります。そのため、情報漏洩やウイルス感染といったリスクが高まります。シャドーITの問題に対処するためには、従業員へのセキュリティ意識の向上IT部門による適切な管理体制の構築が重要です。具体的には、シャドーIT利用に関する明確なルールを設け、従業員に対して定期的なセキュリティ教育を実施する必要があります。また、IT部門は、利用されているサービスを把握し、セキュリティ対策を講じる必要があります。シャドーITは、利便性とリスクを併せ持つものであり、適切な対策を講じることで、そのメリットを享受しながらリスクを抑制していくことが重要です。

項目 内容
問題点 従業員がIT部門の管理外で業務にクラウドサービス等を利用するシャドーITが問題視されている。
メリット 従業員にとって、業務の効率化や柔軟性の向上につながる。
デメリット・リスク – セキュリティリスクの高まり
– 企業のセキュリティ基準を満たしていないサービスの利用による情報漏洩やウイルス感染のリスク
具体例 – インターネットと切り離された閉域網環境下で、従業員がシャドーITによって会社のネットワークと外部のクラウドサービスを接続してしまうケース。
対策 – 従業員へのセキュリティ意識の向上
– IT部門による適切な管理体制の構築(利用サービスの把握、セキュリティ対策の実施など)
– シャドーIT利用に関する明確なルール設定
– 従業員への定期的なセキュリティ教育の実施

変化への対応

変化への対応

– 変化への対応

現代のネットワーク環境は、常に変化し続けています。かつては堅牢とされてきた閉域網も、もはや完璧なセキュリティを保証するものではなくなってきています。インターネット接続の普及やクラウドサービスの利用拡大に伴い、企業ネットワークの境界線は曖昧化し、従来の閉域網の考え方だけでは、増加の一途をたどるサイバー攻撃から守ることは困難になっています。

そこで重要となるのが、変化する脅威に対応できる柔軟性を持ったセキュリティ対策です。もはや、境界防御のみで安全を確保することはできません。ネットワークの構成要素全てを信頼せず、常にアクセスを検証する「ゼロトラスト」の考え方が求められています。

具体的には、接続元やデバイスに関わらず、全てのアクセスに対して認証・認可を厳格に行う必要があります。多要素認証の導入やアクセス権限の細分化など、より強固な認証・認可システムを構築することで、不正アクセスのリスクを大幅に減らすことが可能になります。

さらに、脅威の検知と対応能力の強化も欠かせません。侵入検知システムやセキュリティ情報イベント管理システムなどを活用し、リアルタイムで脅威を検知し、迅速な対応を行う体制を構築する必要があります。変化の激しい現代においては、常に最新の脅威情報を入手し、セキュリティ対策を継続的に改善していくことが重要です。

課題 対策
現代のネットワーク環境の変化 (境界の曖昧化、攻撃の増加) – 柔軟性を持ったセキュリティ対策
– ゼロトラストセキュリティ
境界防御の限界 – 全てのアクセスに対する厳格な認証・認可
– 多要素認証の導入
– アクセス権限の細分化
脅威の検知と対応の必要性 – 侵入検知システムやセキュリティ情報イベント管理システムの活用
– リアルタイムな脅威検知と迅速な対応
– 最新の脅威情報の入手とセキュリティ対策の継続的改善