プライバシー

暗号技術

クリッパーチップ:政府による暗号通信傍受の試み

- クリッパーチップとは1990年代初頭、アメリカでは犯罪捜査機関による通信傍受の難航が問題視されていました。そこで国家安全保障局(NSA)は、新たな暗号化方式を考案しました。それは、連邦政府機関が必要と判断すれば暗号化された通信内容を解読できるというものでした。この仕組みは「バックドア」と呼ばれ、後にプライバシーやセキュリティの観点から大きな議論を巻き起こすこととなります。 クリッパーチップとは、この新しい暗号化方式を実現するために開発された集積回路です。電話やコンピュータといった通信機器に組み込むことで、音声やデータのやり取りを暗号化し、第三者による盗聴や盗視を防ぐことができます。しかし、クリッパーチップに組み込まれたバックドアを利用すれば、連邦捜査機関は裁判所の許可を得ることで暗号化された通信を解読し、傍受することが可能でした。クリッパーチップは、犯罪捜査への利用を期待されていましたが、プライバシーの侵害や政府による監視の強化につながるとの批判が強く、広く普及することはありませんでした。この計画は1996年に正式に中止されましたが、クリッパーチップの登場は、セキュリティとプライバシーのバランスについて、社会に大きな課題を突き付けたと言えるでしょう。
情報漏洩対策

プライバシー・バイ・デザインとは?

近年、私たちの生活はデジタル技術の進歩によって大きく変化し、インターネットや情報技術はなくてはならないものとなりました。それと同時に、個人情報の重要性もますます高まっています。企業は、顧客の購買履歴や行動履歴、位置情報など、膨大な個人情報を扱うようになり、その責任はこれまで以上に大きくなっています。 従来の個人情報保護の考え方では、個人情報保護の仕組みを後から付け加えることが一般的でした。しかし、デジタル技術の進化やデータ活用の進歩は目覚ましく、後から付け加える方法では、個人情報を十分に保護することが難しくなってきています。 そこで、近年注目されているのが「プライバシー・バイ・デザイン」という考え方です。これは、製品やサービスの設計段階から、個人情報保護を考慮するという考え方です。個人情報の収集、利用、保管などのあらゆる段階において、あらかじめプライバシー保護の仕組みを組み込むことで、個人情報のリスクを最小限に抑え、より安全なシステムを構築することができます。 プライバシー・バイ・デザインを実現するためには、企業は、個人情報保護に関する法令やガイドラインを遵守することはもちろん、組織全体で個人情報保護の重要性を認識し、適切な教育や研修を実施していくことが重要です。また、継続的にシステムやサービスを見直し、改善していくことも必要となります。
組織・期間

プライバシーシールドとは:EU個人情報保護の枠組みとその行方

- プライバシーシールドの概要プライバシーシールドは、2016年から2020年まで有効であった、欧州連合(EU)からアメリカ合衆国への個人データの移送に関する法的枠組みです。この枠組みは、EU居住者の個人情報を扱うアメリカ合衆国の企業に対して、EUの「一般データ保護規則(GDPR)」に相当する水準で個人情報を保護することを義務付けていました。プライバシーシールドの目的は、EUとアメリカ合衆国間の協力体制を築き、大西洋を越えたビジネスにおけるデータの流通を円滑にすることでした。具体的には、この枠組みは、アメリカ合衆国の企業がEUのデータ保護基準を満たしていることをEU当局に示すための自主認証メカニズムを提供していました。しかし、2020年7月、欧州司法裁判所(CJEU)は、「シュレムスII判決」において、プライバシーシールドが無効であると判断しました。判決の理由は、アメリカ合衆国の国内法では、EU市民の個人情報に対するアメリカ合衆国政府によるアクセスや利用を十分に制限できておらず、GDPRが求める適切な保護水準を満たしていないと判断されたためです。この判決により、EUからアメリカ合衆国への個人データの移転は、改めて法的根拠が不確実な状況となり、日米間の企業活動にも影響が出始めています。現在、EUとアメリカ合衆国は、新たな法的枠組みについて協議を進めていますが、合意に至るまでには時間がかかると予想されています。
ネットワークセキュリティ

VPN で安心安全なインターネット接続を

- VPNとは仮想専用線(VPN)は、インターネット上に仮想的な専用線を構築することで、安全性の高いデータ通信を実現する技術です。まるで特定のネットワークに直接接続しているかのようにデータの送受信を行うことができます。インターネット上での通信は、第三者に盗聴されるリスクが常に付きまといます。特に、無料Wi-Fiなど、セキュリティ対策が万全でない環境でインターネットを利用する場合、個人情報や重要なデータが漏洩する危険性が高まります。VPNは、これらのリスクを軽減するために有効な手段です。VPNを利用すると、すべての通信データが暗号化されるため、第三者に盗聴されても内容を解読することができません。また、接続元を特定することも難しくなるため、匿名性を保ちながらインターネットを利用することができます。VPNは、企業においても広く活用されています。例えば、外出先から社内ネットワークに安全にアクセスするためにVPNが利用されています。また、複数の拠点間をVPNで接続することで、安全かつ低コストで広域ネットワークを構築することも可能です。このように、VPNはセキュリティと利便性を兼ね備えた技術として、個人から企業まで幅広く利用されています。
組織・期間

ICO:英国の個人情報保護の番人

- ICOとはICOは、"Information Commissioner's Office"の略称で、日本語では"情報コミッショナー事務局"と訳されます。これは、イギリスにおける個人情報の保護を監督する機関です。日本の個人情報保護委員会に相当する組織と考えてよいでしょう。ICOは、政府から独立した組織として、中立かつ公平な立場から活動しています。その主な役割は、個人情報保護に関する法律の運用を監督することです。具体的には、企業や組織が個人情報を適切に取り扱っているかを監視し、違反があれば指導や勧告、場合によっては罰金などの措置を講じます。また、ICOは個人情報保護に関する相談窓口も設けており、誰でも気軽に相談することができます。さらに、個人情報保護に関する啓蒙活動にも力を入れており、ウェブサイトやパンフレットなどを通じて、個人情報の重要性や適切な取り扱い方について広く周知しています。ICOの存在は、イギリス国民のプライバシー保護に大きく貢献しています。近年、インターネットの普及やビッグデータの活用などにより、個人情報の取り扱いがますます重要になっています。ICOは、このような変化に対応しながら、今後も国民の権利と利益を守るために重要な役割を果たしていくでしょう。
情報漏洩対策

アメリカの医療データ保護法 HIPAAとは

- HIPAAの概要HIPAAは、「医療保険の相互運用性と責任に関する法律」という名称を持つアメリカの法律です。1996年に成立し、医療分野における個人情報の保護とセキュリティ対策の強化を目的としています。この法律は、医療従事者や医療機関、保険会社など、医療情報を扱うすべての組織に適用されます。HIPAAは、大きく分けて二つの柱で構成されています。 一つ目は、医療保険の継続性を保障し、転職や失業などによって保険を失うリスクを軽減することです。二つ目は、患者さんのプライバシーとセキュリティを保護し、医療情報の適切な管理体制を確立することです。HIPAAでは、個人を特定できる健康情報(PHI)を厳格に保護しています。PHIには、氏名、住所、生年月日などの基本情報のほか、病歴、治療内容、検査結果なども含まれます。医療機関や保険会社は、PHIへのアクセスを必要最小限に抑え、不正アクセス、利用、開示から保護するための適切な管理的、物理的、技術的対策を講じなければなりません。HIPAAに違反した場合、民事罰や刑事罰の対象となる可能性があります。 違反の程度や故意性に応じて、多額の罰金や業務停止命令などが科せられます。そのため、医療情報を扱うすべての組織は、HIPAAの規定を遵守し、患者さんのプライバシーとセキュリティ保護に最大限配慮する必要があります。
組織・期間

AI開発の指針となる「AI権利章典」とは

近年、人工知能(AI)技術は驚くほどの速度で進化を遂げ、私たちの日常生活に様々な形で浸透しつつあります。自動運転車や病気の診断支援など、AIは社会全体に大きな恩恵をもたらす可能性を秘めていると言えます。 しかし、その一方で、AI技術の急速な発展は、新たな課題も浮き彫りにしています。例えば、AIによる差別や個人のプライバシー侵害、人間の仕事がAIに奪われるのではないかといった雇用への影響などが懸念されています。 AIは膨大なデータから学習し、その結果に基づいて判断を下しますが、学習に用いるデータに偏りがあると、AIが差別的な判断を下す可能性も否定できません。また、AIの開発や利用においては、個人情報の保護や適切な利用目的の範囲など、プライバシーに関する問題にも十分配慮する必要があります。さらに、AIの導入によって、将来的には人間の仕事が奪われ、失業者が増加する可能性も懸念されています。 このように、AI技術は大きな可能性を秘めている一方で、倫理的な利用や適切な規制の整備など、社会全体で解決すべき課題も山積しています。AI技術の恩恵を最大限に享受するためにも、私たち一人ひとりがAI技術とどのように向き合っていくべきかを真剣に考える必要があるでしょう。
暗号技術

プライバシー重視型仮想通貨Moneroの光と影

- MoneroとはMoneroは、インターネット上でやり取りできる仮想通貨の一種です。銀行のような中央機関を通さずに、個人間で直接価値のやり取りができるという点で、従来の通貨とは異なります。Moneroの基盤技術であるブロックチェーンは、取引記録を暗号化して複数のコンピュータに分散して保存する技術です。この仕組みにより、Moneroは特定の管理者や発行元を持たない、分散型のシステムとして成り立っています。Monero最大の特徴は、その高い匿名性です。ビットコインなど多くの仮想通貨では、取引履歴が公開 ledgerと呼ばれる台帳に記録され、誰でも閲覧することが可能です。そのため、取引当事者のアドレスを分析すれば、個人を特定できる可能性があります。しかし、Moneroではリング署名やステルスアドレスなどの特殊な技術を用いることで、取引情報を誰にも追跡できないように秘匿化しています。送金者、受取人、送金額は完全に秘匿され、外部からはただのランダムな文字列にしか見えません。Moneroは、プライバシー保護の観点から注目を集めている仮想通貨です。その匿名性の高さから、違法取引など犯罪に悪用される可能性も懸念されていますが、一方で、プライバシー保護を重視するユーザーや、金融取引の秘密を厳守したい企業などから支持を得ています。
セキュリティを高める

テレメトリー:情報収集の光と影

- テレメトリーとはテレメトリーとは、離れた場所から情報を集め、伝送する技術のことを指します。この技術は、私たちの身の回りで様々な場面で活躍しています。例えば、気象予報に欠かせない気象観測では、気球に搭載されたセンサーが気温や湿度、風速などのデータを測定し、地上へと無線で送信しています。このデータが、天気予報や気象研究に役立てられています。また、自動車業界でもテレメトリーは重要な役割を担っています。車に搭載されたセンサーが、エンジンの状態やタイヤの空気圧、走行距離などの情報を収集し、メーカーや整備工場へと自動的に送信することで、車の故障を未然に防いだり、適切なタイミングでメンテナンスを受けたりすることが可能になります。このように、テレメトリーは私たちの生活を支える様々な分野で利用されています。近年では、IoT技術の発展に伴い、センサーから収集できる情報の種類や量も飛躍的に増加しており、今後ますますその重要性が高まっていくと考えられます。
その他

リベンジポルノ防止法:被害から身を守るために

誰もが気軽に情報を発信できる便利な世の中になった一方で、インターネットの負の側面が深刻化しているのも事実です。性的な画像や動画が悪意を持って拡散される問題は後を絶ちません。特に、かつて恋人関係にあった人間が、別れた相手に恨みを抱き、過去の行為を暴露したり、貶めたりする目的でプライベートな写真を公開する「リベンジポルノ」は、被害者を深く傷つけ、人生に大きな影を落とす卑劣な行為です。 インターネット上に公開された情報は、完全に削除するのが難しいという側面も問題を深刻化させています。一度拡散されてしまうと、まるで消えない墨のように被害者を苦しめ続ける可能性があります。拡散のスピードも早く、あっという間に世界中に広がってしまうため、被害者は精神的に追い詰められ、社会生活に支障をきたすケースも少なくありません。 このような事態を防ぐには、インターネットの正しい知識を身につけ、画像や動画の扱いには十分注意することが重要です。また、仮に被害に遭ってしまった場合でも、一人で抱え込まずに、警察や相談窓口に頼るなど、適切な対応を取りましょう。
セキュリティを高める

Windowsのテレメトリ機能: セキュリティとプライバシーの観点から

- Windows Telemetry とはWindows Telemetryとは、マイクロソフト社が提供するWindows 10以降のオペレーティングシステムに組み込まれている機能です。この機能は、ユーザーの皆様がWindowsをより快適かつ安全に利用できるように、利用状況やシステムの動作に関する情報を収集し、マイクロソフト社に送信します。収集される情報は、大きく分けてシステム情報、アプリケーションの使用状況、エラー情報などがあります。システム情報には、お使いのWindowsのバージョンやパソコンの機種、メモリ容量などが含まれます。アプリケーションの使用状況は、どのアプリをどのくらいの頻度で使用しているかといった情報です。そして、エラー情報とは、システムやアプリケーションで発生したエラーの記録です。これらの情報は、マイクロソフト社によって分析され、Windowsの機能改善やセキュリティ対策の強化に役立てられます。例えば、特定の機能に問題が多いことが分かれば、その機能を改善するための取り組みが行われます。また、多くのユーザーが特定の種類のエラーに見舞われている場合は、その原因を調査し、セキュリティ更新プログラムの提供などが行われます。Windows Telemetryは、ユーザーのプライバシーに配慮して設計されています。収集される情報は個人を特定できるものではなく、また、収集される情報の種類や量をある程度制御することも可能です。
その他

デジタル社会におけるもう一つの影:デジタル・シャドーとは

私たちは現実世界で生活する上で、常に影を伴っています。太陽の下に立てば影が生まれ、その影は私たちの存在を示す指標の一つと言えるでしょう。そして今、デジタル社会においても、私たちに付きまとう「影」が存在しています。それが「デジタル・シャドー」です。 デジタル・シャドーとは、インターネット上に記録されていく、私たちの行動や活動の痕跡と言えるでしょう。例えば、あなたがインターネットで検索した言葉、閲覧したウェブサイト、SNSへの投稿、ネットショッピングで購入した商品履歴など、あらゆる情報がデジタル・シャドーとして蓄積されていきます。そして、これらの情報は時に私たちの知らぬ間に、企業のマーケティング活動や、パーソナライズされた広告配信などに利用されていることがあります。 デジタル・シャドーは、便利なサービスを受けるための代償として、ある程度はやむを得ない側面も持ち合わせています。しかし、個人のプライバシーや尊厳に関わる問題も孕んでいることを忘れてはなりません。自分のデジタル・シャドーがどのように形成され、どのように利用されているのかを意識することが、デジタル社会を安全かつ快適に生きていく上で、重要な視点となってくるでしょう。
ソーシャルハッキング対策

デジタル・フットプリント:インターネット上に残るあなたの足跡

日々利用するインターネット上には、気が付かないうちに様々な情報が残っています。まるで現実世界で歩くと足跡が残るように、インターネット上の行動も記録されていくのです。これがデジタル・フットプリントと呼ばれるものです。デジタル・フットプリントは、ウェブサイトの閲覧履歴やオンラインショッピングで購入した物の履歴、ソーシャルメディアへの投稿など、私たちがインターネット上で行うあらゆる活動の記録です。 例えば、特定の商品をインターネットで検索した後に、別のウェブサイトでその商品の広告が表示された経験はありませんか?これは、過去の検索履歴から興味や関心が分析され、個々に合わせた広告が表示されているためです。このように、デジタル・フットプリントは私たちに関する情報を蓄積し、企業のマーケティング活動などに利用されています。 デジタル・フットプリントは、利便性を高める一方で、プライバシーの観点から注意が必要です。個人情報の流出や悪用などのリスクも存在するため、デジタル・フットプリントについて正しく理解し、自身で情報管理を行うことが重要です。普段利用しているウェブサイトやアプリの設定を確認したり、プライバシーに関する設定を見直したりするなど、できることから始めてみましょう。
認証技術

デバイス特定の最新技術:フィンガープリントとは?

- 機器識別技術デバイスフィンガープリント インターネット上の機器を特定する技術に、デバイスフィンガープリントがあります。 ウェブサイトを閲覧する際、私たちが意識していなくても、利用している機器は様々な情報を送信しています。 例えば、使用している閲覧ソフトの種類や版、基本ソフト、画面の解像度、タイムゾーンなどです。 一見すると、これらの情報から個人を特定することは難しいように思えます。 しかし、デバイスフィンガープリントは、これらの情報を組み合わせることで、まるで指紋のように機器を識別します。 例えるならば、指紋のように、同じ種類の機器であっても、全く同じ情報を持つことは極めて稀です。 そのため、デバイスフィンガープリントは、個々の機器を高い精度で識別することができます。 この技術は、不正アクセスを防ぐために利用されたり、ユーザーの行動履歴を取得して、広告に活用されたりしています。
暗号技術

エンド・ツー・エンド暗号化:プライバシーを守る強力な盾

インターネット上でやり取りされるメッセージは、まるで手紙のように様々な場所を経由して相手に届きます。もし、その手紙の内容が第三者に盗み見られてしまったら、大変なことです。そこで、重要な役割を果たすのが「エンド・ツー・エンド暗号化」という仕組みです。 この仕組みは、メッセージの内容を特別な方法で暗号化することで、送信者と受信者以外には解読できないようにします。 例えば、あなたが友人に手紙を送るとします。この時、手紙の内容を特別な鍵を使って暗号化します。この鍵は、あなたと友人のみが持っている特別なものです。暗号化された手紙は、郵便局員や配達員など、様々な人の手を経て友人に届けられます。しかし、手紙の内容は暗号化されているため、途中で誰かが手紙を開封しようとしても、解読することはできません。 友人は、あなたから受け取った手紙を、自分だけが持っている鍵を使って復号します。こうして、手紙の内容は無事に相手にのみ届けることができるのです。 このように、エンド・ツー・エンド暗号化は、インターネット上でやり取りされるメッセージのプライバシーを守るための重要な技術と言えるでしょう。
ネットワークセキュリティ

通信の秘密侵害: 知っておきたいサイバー犯罪

- 通信の秘密とは「通信の秘密」は、日本国憲法第21条や電気通信事業法などに記された、国民一人ひとりに認められた基本的な権利です。この権利は、手紙の中身や電話の内容といった、あらゆる通信内容を誰にも知られることなく、また、許可なく使われることがないことを保証しています。これは、私たちの日常生活において、プライバシーを守り、安心して生活するために欠かせないものです。例えば、誰かに知られたくない個人的な内容を友人と手紙でやり取りする場合を考えてみましょう。もしも、「通信の秘密」が守られていなければ、その手紙の内容は簡単に第三者に知られてしまう可能性があります。 「通信の秘密」は、このような状況から私たちを守り、安心して他人とコミュニケーションをとることを可能にするのです。さらに、「通信の秘密」は、私たちが自由に意見を表明する上でも非常に重要です。もしも、政府や権力者が私たちの通信内容を監視し、自由に発言することを制限するとしたらどうでしょうか。それは、私たちが社会問題について自由に議論したり、政治的な意見を表明したりすることを妨げることになります。 「通信の秘密」は、私たちが萎縮することなく、自由に意見を交換し、民主的な社会を実現するために欠かせない権利なのです。
組織・期間

GDPR: 欧州の個人情報保護規制とその影響

- GDPRとはGDPRは「General Data Protection Regulation」の頭文字をとったもので、日本語では「EU一般データ保護規則」と訳されます。これは、2018年5月から施行されている、ヨーロッパ連合(EU)における個人のデータとプライバシーを守るための重要な規則です。 GDPRは、EUに住んでいる人のデータを取り扱う全ての組織や企業が対象となります。これは、その組織や企業がEU圏内に拠点を持っているかどうかに関わらず、また、規模の大小も関係ありません。もし、GDPRの規則に違反した場合には、非常に高額な罰金が科される可能性があります。 GDPRは、それまでEUで施行されていたデータ保護指令を全面的に見直し、インターネットが普及した現代の状況に合わせた、個人情報保護の包括的な枠組みを作ることを目的として定められました。GDPRの制定は、EU圏内だけでなく、世界中の国々の個人情報保護に関する法律の整備や、企業がどのようにデータ保護に取り組むべきかという点にも、大きな影響を与えています。
情報漏洩対策

金融機関の顧客情報保護の要!GLBAとは?

- GLBAの概要GLBAとは、1999年にアメリカの議会で成立した「グラム・リーチ・ブライリー法」を指す言葉です。この法律は、銀行や証券会社などの金融機関に対して、顧客から預かった大切な個人情報を守るためのルールを決めています。この法律が作られた背景には、金融機関同士の合併が進んだことがあります。合併によって、様々な企業が顧客の情報を持つようになり、個人情報の扱いに関するルールを明確にする必要性が高まりました。GLBAでは、金融機関は顧客の情報を扱う際に、どのような目的でその情報を使うのかを、顧客に分かりやすく説明し、同意を得ることが義務付けられています。また、顧客の情報が漏れたり、不正に使われたりするのを防ぐため、適切なセキュリティ対策を取ることも求められます。例えば、顧客の情報を取り扱うコンピューターシステムへのアクセス制限や、従業員に対する情報管理の研修などが挙げられます。GLBAは、顧客のプライバシー保護と、金融システムの安定性を両立させるために重要な法律と言えるでしょう。
情報漏洩対策

PHI: 医療情報の保護について

- PHIとはPHIは、-Protected Health Information-の略称で、日本語では「保護されるべき医療情報」と訳されます。これは、個人の健康状態、医療サービスの提供、医療費の支払いなどに関する情報を幅広く指します。具体的には、診察記録、検査結果、処方箋、健康保険の情報などが該当します。PHIで重要な点は、これらの情報が、氏名、住所、生年月日などの個人を特定できる情報と紐づいているという点です。つまり、個人が特定できる情報と結びつくことで、初めてPHIとして特別な保護の対象となるのです。PHIは、漏洩した場合、個人のプライバシーや尊厳を著しく侵害する可能性があります。例えば、病歴や治療内容が第三者に知られることで、偏見や差別を受ける可能性も否定できません。そのため、PHIは法令に基づき厳格に管理され、医療機関や保険会社などは、漏洩や不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策を講じることが義務付けられています。近年、医療情報の電子化が進むにつれて、PHIを取り巻く状況はより複雑化しています。サイバー攻撃による情報漏洩のリスクも高まっており、個人情報の保護に対する意識を高め、適切な対策を講じることがこれまで以上に重要となっています。
暗号技術

プライバシー保護の守護者 PGP

- PGPとはPGP(プリティー・グッド・プライバシー)は、デジタルな情報のやり取りにおいて、プライバシーと安全を確保するための強力な手段です。1991年、アメリカの暗号の専門家であるフィル・ジマーマンによって開発されました。PGPは、電子メールやファイル、その他様々な大切な情報を守るために作られた暗号化ソフトです。PGPが登場するまで、デジタルな情報は簡単に盗み見られる可能性がありました。インターネット上でやり取りされる情報は、誰にでも見られる状態と変わりませんでした。しかし、PGPを用いることで、情報を暗号化し、送信者と受信者だけが解読できるようになりました。これは、手紙を入れる封筒のような役割を果たし、第三者が中身を盗み見ることができなくなりました。PGPは、公開鍵暗号方式という仕組みを用いています。これは、鍵を二つ用意する方式で、一つは公開鍵、もう一つは秘密鍵と呼ばれます。公開鍵は誰でも見ることができ、この鍵を使って暗号化された情報は、対応する秘密鍵を持つ人だけが解読できます。秘密鍵は、自分だけが大切に保管しておく必要があります。この革新的な技術により、個人は安心して情報をやり取りできるようになり、デジタルなコミュニケーションにおいてもプライバシーが守られるようになりました。PGPは、現在でも広く利用されており、プライバシー保護の重要な手段として、その役割を果たし続けています。